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2013年第95回神奈川大会組合せ表[外部リンク]
 

7/23 「それ」は突然やって来る 北陵0−6向上

副題:それでも野球の神はいた
 
 
おそらく、向上高校の方がやや力で上回っていた、と同時に北陵のエース・池田くんは連投で相当疲れてもいたはずだ。

ただ、夏の大会ではそうしたあらゆることが絡み合って進行するものでもある。

毎度のことながら、初回の攻防がその試合の大きな流れを決める。

相手をゼロに抑え、こちらが先制する、という判で押したような戦いを見せていた北陵だが、この日の向上の「圧」はこれまでの相手と少し違うように思えた。

先攻の向上は2番の谷津くんが右中間を破る三塁打。
続く菅野くんがセンターへの犠牲フライ。

これは川崎北戦での北陵の初回の攻撃をビデオで見るかのようであった。

思い起こせば、池田くんはこれまでの3試合でわずか2点しか許していない。

その2点も打ち崩されて、という取られ方ではなかったが、今日のは「打たれた感」がある取られ方であった。

そしてそのウラ、反撃が期待されたが、背番号10の高橋くんに三者凡退に抑えられた。

正直、これはなかなかツライと思わせるスタートであった。

向上は昨日日大藤沢を完封した野村くんを温存(全く違う理由かもしらんが)しつつ、最高の形でゲームを始められた。

それでも2回オモテの向上の攻撃を、服部くんが一二塁間深い当たりをアウトにするなど、いいリズムで三者凡退に押えたことによって、流れを持ってこれるチャンスもあった。
(管理人の私見だが、服部くんは一二塁間に飛んだボールに対する反応が極めて素晴らしい。松島監督が「守備では服部」と仰るのも肯ける)

2回ウラ、一死後、片桐くんがヒット、二死後、この大会打つ方ではあまり目立たなかった本室くんにもヒットが出たのだが、打線が下位に回ってヒットを3本打って1点を取るというのは、やはりなかなか難しい。

ここが試合の分岐点だったかもしれない。

3回・5回・6回と中押しされ、単発ではヒットも出るが、繋がりの妙に欠ける北陵は押された。

しかし、その中で見る者の心を打つシーンもいくつかあった。
 
  
左)7回代打に起用された小高くんは、松島監督が「厳しいところでの代打なら小高ですね」と仰っていた秘密兵器。そして彼はヒットを打った 中)背番号11の蛭間くんは控え投手だが、9回二死から代打に起用されて見事右中間へ二塁打 右)野元くんはこの日も1本ヒットを打ったほか、難しいショートバウンドの送球を2つすくいあげてアウトにするという技も見せてくれた
 
昨日の勝者が今日も勝つとは限らない。

今日勝った者のうち半分は明日敗れることになる。

その非情さが夏の高校野球をせつなく、且つ、華のあるものとしている。

この日を最後に二度と野球をやらない者もいるであろう。

大学・社会人・クラブチームといった硬式野球を続けられる環境は誰もが手に入れられるものではない。

北陵の部員のみならず、「これがファイナルステージ」という3年生たちにエールを贈りたいと思う。

ツライことや苦しいこともたくさんあったのではないかと推察する。

それを乗り切って、やり切って、野球を通じて少し精神的に強くなったとしたら、すごく価値のある3年間を送ったということだ。

「卒業おめでとう」と言いたい。

残された1・2年生諸君には、あと幾ばくかの時間的猶予がある。

しかし、それに甘えず、野球を通じて自らを磨いて欲しい。


...この夏、北陵野球部が頑張ってくれたお陰で、たくさんの人たちが励まされ、高揚感に包まれたことを管理人はよく理解している。

レギュラーだけで野球をやっていたわけではない。

ここぞの場面でハマッてくれるピースたくさん揃っていたのが今年の北陵の特色だった。

派手さがなく、地味にやれることも1つの才能なのである。

管理人は、北陵−向上戦を観させてもらい、「野球の神様は本当にいるのかもしれない」と思った。

6点目を取られたあと、あと1点差をつけられるとコールドゲームになる可能性もあったが、それを食い止めることによって、小高くん・加藤くん・蛭間くんといった3年生たちが代打に立ち、素晴らしい思い出を作ることができた。

そして、小城くん・駿東くん・宮内くんといった2年生、1年生の仁木くんにも出場機会が作られた。

高いレベルでのこうした経験はそれだけで財産となる。

こうした事実を踏まえると、健気に必死に野球に取り組んだ北陵に野球の神様がご褒美を与えたのかもしれない。
(勿論、そういうキャスティングをしたのは松島監督なんだけど)

先発していた本室くん・吉田くん・鶴岡くん・服部くんといったメンバーに加え、本来なら背番号7をつけるはずだった真崎くん(ケガのため登録メンバーから外れた)なども控える北陵。

新チームが既に楽しみだね。

「終り」は必ずやって来る。
でも、それは「始まり」でもあるわけだ。

楽しい夢をありがとう。


書きたいことはまだまだありますが、少し落ち着いたら書かせてもらいますね。
熱き夏の終焉。しかし、それは同時に「始まり」も意味している
  
左)8回からライトの守備に入った仁木くんは1年生 中)9回代走に起用された駿東くん 右)8回からマスクを被った小城くん 君たちが明日の北陵野球部を担っていって下さい
最後の打者となった宮内くん。君も2年生だ。胸を張って明日の北陵野球部を築いて欲しい

7/22 北陵1−0川崎北 部史上最高タイのベスト16達成!
〜5回戦は横浜スタジアムで向上と対決[22日11時開始]〜
 


初回、池田くんの犠牲フライで先制のホームを踏む飯田くん。結果的にこれが決勝点となった
 
 
両チームノーエラーの好ゲームの決着が初回の1点で着くとは想像できなかったが、とにかく、この日のキャプテン飯田くん(先頭打者)は『有言実行』の男であった。

昨日のインタビューで語ってくれた通り、積極的に打ち、積極的に走った。

際立っていたのは初回先頭打者の初球を「ハッシ」と叩いてセンター前へ持って行ったバッティングだ。

さらには、果敢に盗塁を決め、相手バッテリーの動揺を誘うと、ワイルドピッチで三進、この日も投打に大活躍の3番池田くんが「ま、最低限の仕事だけどね」(とは言っていませんが)のセンターへの犠牲フライ。

川崎北にとっては何がなんだかわからない、という形容がぴったりの失点だったに違いない。

しかし、飯田くんの描いた青写真通りにサクッと取った先制点で北陵はリズムに乗ったし、池田くんも気分よくマウンドに上がれたはずだ。

「1点という僅差でしたが、ベンチ内の雰囲気はすごくよかったですね。池田も力が抜けて、危なげなかったですよ」とは馬場部長の言葉だ。

終わってみれば3安打11奪三振の快投であった。

  
左)4番野元くん 中)決勝犠飛を放った池田くん 右)堅守で内野を盛り上げる坪田くん
 
  
左)セカンド服部くんは2回の守備で一二塁間の深い当たりを追いついてアウトにする好プレーを見せた 中)力投の池田くん 右)3安打・1四球(全打席出塁)と神懸かり的だった飯田くん
 
  
左)馬場部長、加藤・奥本両コーチ 中)満面の笑顔。竹内マネ・大島マネ 右)勝利監督は勿論、松島勝司監督
 
  
左)当たりの出てきた野元くん 中)向上のエース・野村くん 右)ライトの鶴岡くんは北陵の前監督・鶴岡英一さん(現・藤沢工科監督)のご子息。この日はお父さんが観戦されていました
 
実は管理人は第一試合(日大藤沢−向上)の途中、毎年金網に張りついて「無料観戦」している野球好きのオッサンの一人に「今、何対何ですか?」と訊いてみた。

すると、「4−0だよ」とのことだったので、不覚にも第1シードである日大藤沢がリードしているものだと思ったのだが、球場に入ってみると、向上がリードしており、そのまま逃げ切った。

それを成し得たのは向上のエース・野村くんの好投であった。

頭脳的なピッチングで冷静沈着。
日大藤沢に的を絞らせないコントロールも素晴らしかった。

22日、北陵はこの好投手を打ち崩せるか...

松島監督に明日のポイントを尋ねてみた。

管理人「北陵が1−0の試合をするとは正直驚きました。」
松島監督「法政二高戦を経て、少し精神力が強くなりましたかね。守りでも致命的なミスは出ていませんから。」

管理人「いよいよ北陵が目標としていたベスト16を達成しました。明日勝ってベスト8を掴むには、何がポイントになりそうですか?」
松島監督「打てるかどうか。特に野元がポイントになると思います。昨日・一昨日で馬場先生とフォームをチェックして、ようやく何とか当たるようになりました。野元には打ってもらわないと。あとは、服部と本室ですね。本室は随分静かな感じですから。」

思うに、飯田くんの調子がよいので、服部くんには場面によってバントを期待している、ということなのかと。

それと、本室くんは3戦を通じて確かにバッティングの印象が薄い。
ま、それも向上戦で取り返せばいいことだけどね。

今日(21日)、管理人が最も嬉しかったのは野元くんがセンターオーバーの二塁打を打ったことだ。

20日の練習を取材させてもらった際、馬場部長が「フォーム改造を施しました」と仰っていたが、川崎北戦では第1打席からタイミングが合っているようにも見え、第3打席で二塁打が生まれた。

試合後、野元くんに話しを訊くと、「やっとどうにか打てました。でも、走塁、まずかったですよね。明日は打つ方も走る方も頑張ります!」とのこと。

6回ウラ、二塁打のあと、坪田くんが三遊間にヒットを打ったのだが、野元くんが進塁せず二塁に戻ってしまったことを反省しての弁 である。

管理人メモには「走塁でミスあったが、1本出たことが大きい」とある。

実は、管理人は野元くんに凄く期待している。
だが、それを強く伝えるとプレッシャーになるのでは、と思い、控えていたところがある。

この日は彼が1本打ったので、「明日は君が打つかどうかに懸かっているよ」と思い切って言ってみた。

「それが自分の役目なんで、どんどん言って下さい」と元気な声が返ってきた。

頑張れ、野元。
君が機能すると、北陵打線はさらに強大なものとなる。

横浜スタジアムが君を待っている!
 
この日、北陵応援席はとても盛り上がっていた。やはり野球部が勝ち上がると「愛校心」に火がつくものらしい。横浜スタジアムへも生徒・保護者・OBが多数駈けつけるものと予想される
 

7/21 北陵野球部に心からのエールを贈ります
 
 
法政二高との激戦から2日。

静寂を取り戻した北陵高校グラウンド、正午過ぎ。

明日(21日)の4回戦、川崎北高校との試合を控え、選手たちは入念なチェックを行っていた。

法政戦の前も同じだったが、今急に何か新しいことをやって力になる、といったマジックはおそらく存在しない。

あくまで、これまで積み上げてきたことをどれほど精度高く出し切れるか、ということを求めて意識を上げてゆく、というのが狙いである。

この日は細かく状況を設定して、内外野へのノックを中心に守備での意識確認に時間を割いた。

  
 
今年の北陵は守備での破綻がない。

その象徴が服部くん(写真左)と坪田くん(中)の二遊間であろう。

彼らが絡んでゲッツーを完成させることで失点を防いできた。

川崎北戦でも是非その力を発揮してもらえれば、と期待している。

また、捕手の吉田くん(右)は法政戦後、熱中症で救急搬送され、心配であったが、20日の練習には参加、どうやらやれそうだ。

松島監督のお話の中で、しばしば「吉田のコンバートが当たりましたね」というフレーズが登場する。

実は7月6日に行われた最後の練習試合(対茅ヶ崎高校)まで、エースの池田くんとはバッテリーを組ませたことがなかったそうで、吉田くんを内野の控えの1番手として考えていたとのこと。

勿論、指揮官というのは様々な戦略を抱えているので、あらゆる想定の中、ダブルヘッダーの第2試合では彼にマスクを被らせ、キャッチャーとしての経験も積ませておいた。

けが人が出たこともあって、ポジションが玉突き現象の如く替わってゆく中、2回戦・3回戦でのメンバーが固定出来たのは、吉田くんの存在が大きかったのである。

彼は貴重なバント要員でもあるので、何とかよいコンディションでやらせてあげたいものだ。

酷暑にならなければいいなぁ...
(管理人自身のためにも、ね)
 
エース・池田くんの矜持
 
四死球がやや多く(6個)、それがピンチを招いたわけでもあるが、それを意に介さず勝負できるところが「大黒柱」と呼ばれる所以でもあろう。

法政二高戦では主審のストライクゾーンがやや狭かったということに加え、相手の強力打線を考えて、なるべくコーナーへ、という配給だったため、フルカウントからのフォアボールが出てしまったが、調子自身は悪くないという認識で投げていたとのこと。

既に新聞報道にもあったが、後半に怒涛の如く訪れたピンチに「ストレート狙いできているから、一か八かシュートで」という読みも見事に当たり、失点を防いだ野球センスの高さも見事だった。

法政二高戦での勝利の余韻の中、川崎北戦への抱負を訊かせてもらった。
 
池田くん「確かに法政二高に勝って嬉しいですが、ここで満足感に浸って受けに回らないようにしたいです。川崎北も打線のよい相手なので、うちらしい戦い方が出来ると思います。勝つには紙一重の運も必要なので、それを引きつけられるようにしたいですね。」

2回戦では8回3分の2、3回戦では完投と酷暑の中投げてきた体には疲労も溜まっているかと想像する。

力を抜いて、ずどんと来る本来のボールが決まれば、北陵ペースと見ました。

そして、法政二高戦での7回の決勝タイムリーも見事であったが、フルカウントになった時点で「絶対にストレートで来る」と読み、実際それを打った読みも素晴らしかった。

投打ともに期待してます!
 
内野の要 副キャプテン・坪田くん
 
何しろショートの坪田くんは管理人認定“ラッキーボーイ”である。

法政二高戦で先制のホームを踏み、大ピンチを防ぐゲッツーを2つ完成させる「引きのよさ」は坪田くんが“何か”を持っている証左であるように思える。

管理人「坪田くんのウリは何でしょうか?」
坪田くん「僕には池田のような野球センスはないのですが、守りには自信があります。内野はセカンドとサードが下級生なので、僕と野元で声掛けをして盛り上げています。エラーをしない、投内連携でのミスをしない、ということを常に意識しています。」

管理人「キャプテンの飯田くんが外野手ということもあって、試合中には中心になることも多いと思います。チーム全体に対してここ1年気遣ってきたことは何ですか?」
 
坪田くん「飯田が厳しいことを言う分、僕はどちらかというと和らげる立場というか...。時には笑いを取ったり(笑)」

管理人「法政二高戦での守りはひじょうによかった思いますが、ピンチの時に『俺のところへ飛んで来い』とか思うの?」
坪田くん「あの時は『今日はどんなボールが来ても取れる、アウトに出来る』という感覚がありました。」

管理人「明日の川崎北戦に向けての抱負をお願いします。」
坪田くん「エラーが出てしまった時にいかに雰囲気を悪くしないか、ということに気遣っていきたいです。エラーはある意味しかたないことですが、それで落ち込んでもしかたありませんから。勿論、ノーエラーでいきたいてずね。」

松島監督が「派手なところはないですが、坪田がきちんと守ってくれる、という安心感は大きいですよ」と語っていました。

是非、その力を遺憾なく発揮して下さいね。
 
飯田主将 目標のベスト16に向けての決意
 
北陵野球部史上、夏の最高成績である“ベスト16”を目標に戦ってきたチームが、いよいよ21日、川崎北との一戦に挑む。

法政二高戦では先頭打者として積極果敢に打ち、走った飯田くん。

彼の様々な意味でのリーダーシップが発揮されないと、北陵はチームとして機能しないと感じる次第である。

管理人「明日の試合に向けて、心掛けていることは?」
飯田主将「法政二高戦と同じで、積極的に動いてゆくことです。それで突破口を開きたいです。」
 
管理人「どういう試合にしたいですか?」
飯田主将「とにかく油断せず、法政二高戦の前と同じ、挑戦する気持ちで臨み、接戦に持ち込んで勝ちたいです。」

管理人「川崎北のビデオとかは見たのかな?」
飯田主将「しっかり見ました。どちらのピッチャーが来るかわかりませんが、どちらにも対応できると思います。」
(川崎北は背番号1の深澤くんと10の井上くんの継投で来ると予想される)

その意気やよし。

それにはまず先頭打者の君が撹乱しないとね。

走攻守全ての面で期待しています!
 
熱いぜ!加藤コーチ
 
3年目となる加藤コーチの檄は管理人が見た中で最も熱いものだった。

ノックの最中、ちょっとしたミスが出ると「それで1点取られて後悔するんだよ!それが出たら終わりなんだよ」と声を枯らしての絶叫もあった。

練習開始前に訊いたところでは「大会に入ってから、初球から打ちにいく姿勢が感じられ、それが結果としても表れている」という点をよさとして挙げてもらった。

川崎北戦について、チームに求めるものは「守りでも積極的にいく姿勢でしょうね。気持ちが前に出れば、いい試合は出来ると思います」とのこと。

「 ロースコアの展開というより、4〜5点取れればうちのペースになるのですが...」
 
首脳陣 秘策を練る?
 
練習中、松島監督・馬場部長が川崎北高校の春季大会(1回戦。対慶應藤沢。1−12でコールド負け)のスコアを見ながら、作戦会議...。

馬場部長「こちらがきちんとやるべきことをやれば、十分戦える相手です。今年は一昨年までほど打撃が凄いというわけではありませんから。ただ、こちらも疲れているので4点以上の勝負になるでしょうね。カギはチャンスで一打出るかどうか、です」

松島監督「法政二高戦では格上相手に序盤で大量点を取られると、前半で試合を決められてしまうので、僅差で後半に持ち込むため、守備のタイムを3回、すぐに使ってしまいましたから、ベンチ・プレーヤーともに我慢の連続でした。明日も僅差で試合後半に持ち込みたいですね。相手のことを考えて、というより、今あるベストメンバーでやれることをやる、ということに尽きますね」
 
 

試合を経るごとに力がついてゆくのが高校野球の醍醐味。

過去最高の成績に並ぶビッグチャンスを掴んだ北陵の健闘を祈ります。

平塚球場でその雄姿を見せて下さいね。
(管理人も行かせてもらう予定ですが、5時から授業なので、延長戦は勘弁して下さいね)


7/19 鳥肌ゲーム 北陵2−1法政二 意外な展開にスタンド釘づけ
 
 
勝因は間違いなく「粘り」
 
管理人は試合前、猛烈な打ち合いを想定して球場に向った。

3〜5点の攻防だと考えていた。
いや、場合によっては7〜8点で勝負が決まるかもしれないとも妄想していた。

しかし、最終スコアを見ての通り、2−1というロースコアゲームであった。

勿論、そのスコアは意外ではあったが、そこに決着する要因があって、そこに落ち着いたとも言えよう。
 
  
左から北陵・池田くん、法政二・先発の島村くん、リリーフの河野くん
あまりの暑さに管理人は2度ほど気が遠くなったが、ぎりぎりセーフ。選手たちはもっと暑い場所で戦っているんだし、審判員の人たちはずっとグラウンドに立ちっぱなしだから、ひどく心配になりました
 
実はこれだけ暑い中、集中力が途切れたチームが、勝手に転んで大量点を献上する可能性も十分だと考えてもいた。

ゲームの行方を決めるカギはやはり初回にあった。

先攻の法政は四球2つと北陵外野陣のミスとも思えたヒットで一死満塁。
管理人は法政応援席側で見ていたのだが、当然のことながらえらい盛り上がりだ。

実はこの時点で、先日奥本コーチが言っていた「初回エラー絡みでの失点があればなし崩しに...」の法則で大量失点かというところ、法政5番の金子くんの強烈な当たりに管理人は瞬間、目をつぶった。

0.2秒後、「った」という歓声を上げようとした法政応援席から「たあぁぁ...」という溜息が洩れた。

打球はショート坪田くんの正面を突き、ゲッツーとなったのだ。

この時点で、管理人は「今日のラッキーボーイは坪田くんかも」ということと、「もしや表面張力合戦?」ということを思った。

「表面張力合戦」というのは、水を張り詰めたコップに1円玉を浮かべて、どれだけ耐えられるか、つまり、ランナーをどれほど出しても、ホームにさえ帰さなければ得点はカウントされないんでしょ、という攻防である。

試合全体を俯瞰すると、まず、北陵がそれを無失点で切り抜けた、という図式だ。

そして、そのウラ、北陵の攻撃も先頭のキャプテン飯田くんが好打&好走で無死二塁のチャンスを掴んだ。

どうにか二死三塁まで進めたのだが、やはり無得点に封じられた。

これは先に破綻した方の負け、という雰囲気が漂う。

が、北陵は2回、先頭の片桐くんがヒットで出ると、続く坪田くんも三遊間へのヒット。
これで無死一・三塁の絶好機が訪れる。

本室くんが強攻でサードゴロ。
サードランナーの片桐くんがホームでタッチアウト。

ちょっとじりじりする展開となりつつあったのだが、ここでセカンドランナーの坪田くんが三盗を決め、直後、鶴岡くんがセンター前にポトリと落ちるヒットで、1点をもぎ取った。
  
左)先制のホームを踏む坪田くん 中)積極的走塁を有言実行した飯田主将 右)2点目のホームイン(鶴岡くん)
 
その後、両投手ともにランナーは出しつつも、失点はしない投球で迎えた5回オモテ、法政の攻撃。

管理人メモ(B5サイズのコピー用紙なんですけど)によると、「池田の体力いつまでもつか、守りの集中続くか」とある。

先頭にヒットを打たれたあと、サード前への絶妙なバントで無死一・二塁。
さらに、送りバントを決められ、一死二・三塁から、ライトへのポテンヒットで同点とされた。

そして、勝負の最大のアヤはここにあった。

尚一死一・三塁の激しいピンチにまたしても快音が響いたのだが、打球はまたしても“ラッキー”坪田くんの正面に飛び、二度目のゲッツーで、結局最少失点で凌いだ。
 
  
左)ベンチで戦況を見つめる松島監督、馬場部長、大島マネ。初戦に続いてスコアを書く机がなかったみたいだけど、大丈夫だったのかな? 中)ピンチでマウンド集まる内野陣。伝令係の背番号15・加藤くんは今日は結構忙しかった 右)試合後、笑顔で勝因を語ってくれた飯田主将。「ピンチがあっても粘って、諦めずに戦うことで勝つことが出来ました。次戦も頑張ります」
 
まさしく「表面張力合戦」である。

それでも法政の怒涛の攻めは続く。

6回オモテ、先頭の3番打者・向山くんに粘られて四球を与えると、4番・田島くんがライト線に二塁打で、またしても無死二・三塁の超ピンチ。

正直、管理人はここでスクイズに来られたら相当嫌だなぁと思っていたが、その気配は微塵もなく。
5回のことがあるだけに、構えだけでもバッテリーは動揺したのでは...。

まずは5番の金子くんを強い当たりながら、ピッチャーゴロで一死。
6番・水上くんをサードファールフライ。
そして、7番島村くんをピッチャーゴロ。

痺れるぜ...

ここが最大の山場かと思いきや、まだ先があるから恐ろしい。

北陵もそのウラ、池田くんの二塁打などでチャンスを作るが無得点。

いやぁ...見ている方も相当疲れます。

そして7回オモテ。
ついに池田くんが限界なのかと思えた。

一死からデッドボール・フォアボール・フォアボールで満塁に。

し かも2つのフォアボールはフルカウントまでいってから出したものだ。

走者を出すこと自身もピンチなのだが、この暑さの中、太陽を浴び続けることも辛かろう。

そして、この試合最大の場面(あくまで管理人認定ですが)が訪れた。

打者・田島くんの打球はレフトを襲う。

北陵のレフトはもともと控え投手から好調のバッティングを買われて抜擢された片桐くん。
慣れないポジションゆえ、その守備には一抹の不安はあった。

しかし、必死の背走で追いつき、見事キャッチ。

人生「たら・れば」はないが、あの打球が抜けていたらおそらく走者一掃で3点を失っていたはずだ。

管理人は胸がいっぱいになった。
(松島監督は「片桐は守備そのものは巧くないですが、球際にはひじょうに強いものがあります」とゲーム後仰っていました)

最大のピンチを凌いだ北陵は鶴岡くんと服部くんのヒットで二死ながら一・三塁のチャンスをお膳立てしたところで、バッターはひじょうに振れている池田くん。

ここで、法政はピッチャーを交代。
背番号11の河野くんをマウンドに送って勝負に出た。

フルカウントと粘った池田くんのバットが一閃、打球はセンターへ抜け、鶴岡くんが歓喜のホームイン。

しかし、ゲームはまだ終わっていなかった。

法政の監督は自らが甲子園に出場経験を持つ人で、簡単に諦めたりはしない。

打順が下位に回ることもあったが、連続して代打を送り、2人目の内藤くんがヒット。

さらにそこへ代走・持田くんを送る。

1番の小澤くんの難しい当たりをレフト片桐くんがナイスキャッチで2アウトになると、その代走に二盗・三盗を仕掛けさせ、それを決めて、ついに二死ながらランナー三塁という、何が起こるかわからない場面を作った。

その窮地を「絶対に気持ちで負けない。物怖じしない」と誓っていた池田くんが最後、渾身の力で三振に仕留め、ゲームセットとなった。

こうして、ビッグウェーブが互いに来そうな展開を小さな波に押える形で北陵が一枚だけ上回って勝利した。

試合後、奥本コーチは「池田は生涯最高のピッチングをしたと思います」と語ってくれた。

松島監督が北陵に就任して10年。
ずっと『強豪私学を倒したい』という一貫した目標を掲げ、「10回戦って7〜8回負ける相手であっても、戦いようは必ずあります」と仰っていた信念を、目の前で成就して頂き、管理人もただならぬ高揚感に気持ちが躍りました。

本当においしそうにタバコを吸う姿に、男の矜持を感じました。

次戦、公立の雄・川崎北との対戦は21日(日) 平塚球場の第2試合(13:30)。

準地元で現役の在籍生・OBたちが多数応援に来るはず。

ベスト16と言わず、どこまでも北陵旋風を吹かせて欲しい。

期待しています。
 
 
 

7/17 5点の攻防!?スピードに負けるな
 
18日は法政二高との3回戦。

部員たちも、監督も楽しみにしていた強豪私学との対戦である。

それに備えて試合のない16日・17日をどのように過ごすのかを、北陵野球部を訪ね、垣間見させてもらった。

今日(16日)は学校が7限まであり、練習開始が午後4時10分。

しかし、昨日あれだけ暑い中を戦ったので、コンディション調整を考えればちょうどよいくらいかもしれない。
 
練習メニューは左の通り。

アップ、キャッチボール、トスバッティングといったルーティンに続き、12メートルの距離から全力で投げられたテニスボールを打つという練習が入っている。

これの意味するところは、スピードボールに目を慣らし、振り負けないだけの感覚を培っておくことにある。

かつて、松島監督就任初年度(2004年)、4回戦で前年代表の横浜商大高校との対戦前には、ナント9メートルから同じことをやり、今やメジャーで活躍する田澤純一投手から11安打した経験を持つ。
[詳しくはこちら

あの試合は管理人もスタンドから観戦していてシビれた、という記憶がある。

当時の横浜商大は第2シードであり、また県を代表する田澤くんから、相手を上回る11本のヒットを打ったのはまさに現在の「強豪に打ち勝つ北陵」の原形が形成された試合だった。

強いと称されるチームには、ほぼ間違いなく、様々な局面での「速さ」が存在する。

投手の投げるボールの速さ、打球の速さ、走塁の速さ...

しかし、そうした「速さ」に対応するのに1日や2日の急ごしらえでは当然難しい。

北陵は1年を通じてそれを目指してやってきた上で、直前のおさらいをやっているのである。
 
  
12メートルを全力で投げるため、実は投げる方も結構大変なのである...
 
さらに、次は内野陣に対するスピード感覚養成のため、至近距離からのノック(これもテニスボールを使用)である。
(恐怖心を少しでも和らげるため、選手たちは防護マスクを付けている)

強豪私学の選手たちは総じて公立高校の選手よりも体が大きく、筋量も多い。

彼らの芯を食った打球は半端なく強烈だ。

少なくとも管理人は絶対に受けたくないし、受けられもしない。

しかし、グラウンドで戦う選手たちはそれを捕らなければならないわけだ。

同情する...

というわけで、本気で甲子園を狙うとなければ、そんな試合を何度も勝ち抜かねばならないのである。
 
  
中)腰痛持ちの野元くんだが、体のキレを作るため、ノックを受けていた
 

キャプテン・エース・マネージャー・コーチ・監督 それぞれの抱負
 

飯田悠斗主将
 
管理人「勝つために絶対必要なことは?」
飯田主将「積極性だと思います。守備にしても走塁にしても、受身に回ったらやられてしまいますから。あとは気持ちで負けないことです。」

管理人「君自身のプレーヤーとしてのよさも発揮したいですね。」
飯田主将「はい。とにかく、フォアボールでもデッドボールでもいいので、出塁して引っ掻き回したいです。」

管理人「昨日の上溝南戦で課題が残ったとすれば?」
飯田主将「せっかく序盤で大きくリードしたのですが、中盤は暑さもあって集中力を欠いたところがありました。法政相手にそうなっては勝負にならないので。」
 
管理人「あの暑さの中で、試合中、コンディションは大丈夫だった?」
飯田主将「足がつるといったことはありませんでしたが、やはり思ったようには動けませんでしたね。」

管理人「部員たちに伝えたいことは?」
飯田主将「気持ちで負けない、焦ったり諦めたりしない、ということです。それと、勝ったらどれほど楽しいか、どれほど周りを驚かせられるか、を考えよう、と言いたいです。」

そうだね。
そのためには君が縦横無尽にグラウンドを走り回ることが不可欠だね。

先頭バッターとしても大いに期待しています。
 
池田颯投手
 

管理人「まず昨日のピッチングについては?」
池田くん「自分の経験を活かして、流れを持ってくると皆に言って初回のマウンドに立ったのですが、5回くらいまでは力みがありました。」

管理人「変化球はあまり投げなかったようですが?」
池田くん「はい。ストレートで押せばいけると思ったので。」

管理人「法政二高に対して、どんなピッチングを考えていますか?」
池田くん「相手が格上なので、当たって砕けろという気持ちですね。昨日の中盤以降の力が抜けたピッチングをゲームを通じてずっと出せれば、と思います。」

管理人「打つ方に関してはどうですか?」

 
池田くん「調子は悪くないです。昨日ヒットは初回の1本でしたが、ほとんどの打席で芯を食った当たりだったので。次の試合では、出来れば速いピッチャーに出てきて欲しいです。変化球主体のピッチャーよりも、そちらの方が得意なので。そういうピッチャーは、追い込んだらたいていストレートじゃないですか。そこを捉えられれば。追い込まれたあと、変化球なら、ある意味しかたないかと。8割方ストレートだと思って打席に立ちたいです。」

管理人「けが人も出て、メンバーもいろいろと替わったけど、その影響は?」
池田くん「片桐が打つ方でも頑張ってくれて、リリーフとしても投げてくれるのは心強いですね。正直、あの暑さの中で1試合全力で、というのはかなり厳しいですし。法政二高戦では片桐先発とかもアリなんじゃないかと思います。」

管理人「勝つとすれば、どういう戦い方をした時だと思いますか?」
池田くん「守り勝つというチームではないので、物怖じせず、取られたらその分を取り返すような展開だと北陵ペースだと思います。」

うん。
そうなるといいね。

投打ともに期待しています!
 
マネージャー 竹内千尋さん&大島美波さん
 
  
初戦ベンチに入ったのは竹内さん(背の高い方)。

管理人「試合中、ベンチの雰囲気はどうでしたか?」
竹内さん「すごい盛り上がって。ただ、ハイタッチはベンチ内でやるように叱られました(笑)」

管理人「気を付けたことは?」
竹内さん「スコアをいつも以上にきちんと付けようと思いました。それと、道具のチェックですね。」

管理人「次戦は大島さんがベンチに入ると思いますが、何かアドバイスは?」
竹内さん「氷を大量に準備するということと、ベンチ内にスコアをつけるための机がなくて、膝の上で書いていたので...。あれって机を持っていくんですか?」
(勿論、管理人にはわかりませんが...。確かにベンチ内の写真で確認すると机がありませんね)

管理人「法政二高戦に備えて何かやっているんですか?」
大島さん「今日、昼休みにベンチ入りしていない2年生の撮ったビデオを皆で見ました。それをこれから石井が編集します。」
(石井くんはどこでそんな技を習得したのだろうか...)

管理人「大島さんはベンチでどんなことに気をつけたいかな?」
大島さん「道具をきちんと揃えて、選手に迷惑を掛けないようにしたいです。あと、水分と塩分の補給には気を遣いたいです。」

そうだね。
この夏、あまりの暑さに脱水症状を起こす選手も多いしね。

管理人「で、1回勝ってみて、どう?」
竹内さん「めっちゃ嬉しいです!試合後にベンチ前で校歌を歌うのは気持ちよかったです。」

大島さん「私はスタンドで得点の入るたびに校歌を歌うことが出来て、校歌が好きになりました(笑)。去年は得点を取れずに負けてしまったので、余計にそう感じました。」

また校歌を歌えるといいね。
管理人も校歌の最後の方だけは11年の取材の蓄積でようやく覚えました。

是非、一緒に歌いましょう。
 
奥本涼太コーチ
 
現役時代は主将。
3年時には大会でホームランも打った強打者だった奥本コーチ。

今年のチームについて語ってもらった。

管理人「昨日の上溝南戦を経て、次戦に向けてどう戦ったらいいでしょうか?」
奥本コーチ「相手はミスをしないので、気持ちで負けたら終わってしまいます。当然、打たなければ勝てないわけですが、昨日の『打てる』というイメージをそのまま持っていてはやられてしまうと思います。気持ちを切り替えて、速いボールに慣れることです。その意味で今日の練習は大切ですね。」

管理人「法政二高に勝つための条件としては?」
 
奥本コーチ「初回、エラー絡みで失点すると厳しいと思います。自分たちの代は、横浜創学館と当たって、初回先頭打者の打球でエラーが出てしまい、あっと言う間に4点取られて、試合にならなくなってしまいました。今年のチームはその時より守りがいいので、初回に破綻しないことを願いたいです。」

管理人「とは言いつつも、打たなければ勝てません。打線については?」
奥本コーチ「普通にやれば、相手投手が全国レベルというわけではないので、3〜4点は取れる可能性は十分にあると思います。ただ、初戦を見て、例えば二死二塁といった場面で池田に打席が回ってきたら、勝負を避けて、タイミングの合ってなかった野元との勝負に来られることも考えられますから、野元がキーマンだと言えるでしょうね。」

う〜む、なるほど。

解析力抜群の奥本コーチ。
就活も順調のようで何よりです。

また試合の時にお会いしましょう。
 
松島勝司監督
 
  
松島監督が赴任されて10度目の夏。

その年その年でチーム力は当然違うが、1試合終えて、今年のチームはどうであろうか。

管理人「昨日の試合を経て、チームの状況をどう考えられますか?」
松島監督「よくここまでこられましたよ。けが人も出ましたが、やりくりで何とか。」

管理人「確かに背番号通りのポジションは3人しかいませんでした。しかし、それがこのチームの適性であると?」
松島監督「そうですね。いろいろと不安要素もありますが...」

管理人「さて、いよいよ楽しみにしていた強豪私学との一戦ですね。」
松島監督「はい。子どもたちの力が最大限発揮できればよいのですが。」

管理人「ポイントはどこになりますか?」
松島監督「とにかく打てるかどうか、ですね。中でも野元のタイミングが合うかどうか、というのは大きいですね。池田だけではなかなか相手に圧力を掛けられませんから。」

管理人「ビッグイニングを作るには彼の力が欠かせない、と。」
松島監督「はい。勿論、バントなどの小技も使う場面はあるかと思いますが。」

管理人「昨日の試合ではキャッチャーの吉田くんが2つバントを決めましたね。」
松島監督「彼はもともと右 バッターだったんですが、あまりに打てないので左に転向させたんですね。そしたら、左の方が飛距離も出ますし、バントもうまく転がせるようになって。夏前になって、キャッチングのうまさから、捕手に戻したのですが、どうにかやってくれていますね。ボールを取ってからスローイングまでの時間も速いですよ。」

管理人「私の目から見ると、服部くん・吉田くん・片桐くんあたりがラッキーボーイになる予感がします。」
松島監督「そういうのが出てくるといいですね。」

管理人「では18日を楽しみにしています。」

監督は法政二高戦に向けて、ちょっとした高揚感がおありだと窺えました。
健闘を祈ります。

コーヒーご馳走様でした。
 

7/16 初回猛攻,揃い始めたピース。北陵,初戦突破で勢いに乗れるか
 
 
試合の趨勢は初回で決まったと言える。

高校生どうしの一発勝負は、初手で大きな動きがあると、その流れを逆向きにすることはなかなか難しい。

それをまざまざと見せられた試合だった。

松島監督はジャンケンに勝ったら後攻を取りたかったそうだが、負けて先攻になった初回、先頭・飯田主将がデッドボールで出塁すると、2番服部くんに「送りバントもあるかな」と管理人は考えていたが、そのそぶりも全くなく、強攻。

ある意味で「さすが北陵」なのだが、その服部くんはショートゴロでランナーが二封。

試合後、この局面について監督に話を伺うと、「服部はバントさせることもある選手ですが、初回なので、ここは積極性を形にして見せようという意図で、打たせました。結果がどうあれ、それは納得の上ですね。」とのこと。

そして期待の3・4番である。

池田くんのバットが一閃すると、打球はセンターを超え、一死二・三塁とチャンスが広がった。

ここで先制点が入れば北陵ペースとなるが、当然相手はそうさせまいと必死である。

ところが、ここで上溝南にとって手痛いバッテリーミスで服部くんが先制のホームを踏んだ。
(この場面を見て、管理人は服部くんにツキがあるのではないかとちょっと感じた)

4番野元くんが倒れ、1点止まりかと思われたのだが、ここで松島采配が当たることとなる。

5番は背番号10、控え投手である片桐くんだ。

実は北陵はけが人が何人か出て、背番号と守備位置が一致しない選手起用が多くならざるを得なかった。
その一人が片桐くんであった。

大会前に打撃の調子が上がってきて、固定できなかったレフトのポジションを取ることになったばかりでなく、5番を任されることになったのである。

その片桐くんが二死三塁からセンター前に弾き返すタイムリーヒットで池田くんがホームイン。
この試合は勿論、北陵のこれからの戦いに於いても、服部くんと片桐くんがどう機能するかで流れが変わるのでは、と思わせるに十分な一撃であった。

松島監督も「ツーアウトからの片桐のタイムリーは大きかったですね」と振り返る。
 
  
  
  
北陵先発ナイン。上左からピッチャー池田くん、キャッチャー吉田くん(背番号16)、ファースト野元くん(背番号2)、セカンド服部くん(背番号14)、サード本室くん(背番号3)、ショート坪田くん、レフト片桐くん(背番号10)、センター飯田くん、ライト鶴岡くん(背番号19)。背番号と守備位置が合っているのはたった3人だけ!
 

これで初戦の硬さがほぐれたのか、坪田くんがヒット、本室くんが四球で続き、8番鶴岡くんのセンター前タイムリーで2点を追加した。

初回4点のビハインドは上溝南にとって相当こたえたはずだが、それだけでなく、北陵のエース・池田くんの立ち上がりは圧巻だった。

必ずしも制球力で押えるタイプではないから、適度に球が散って、何と三者連続三振を奪ったのだ。

松島監督曰く「とにかく無駄なボールは投げるな。どんどんストライクを取っていけ、と指示しました」とのことで、上溝南応援席を静まらせるのに十分なピッチングだった。
(正直に告白すると、管理人はちょっと鳥肌が立ったよ)

先制の4点と三者連続三振という絵に描いても描けないような初回の展開で、流れは大きく北陵に傾いた。

大黒柱・池田くんの面目躍如であった。

勿論、何が起こるかわからないのが野球というスポーツの面白さでもあるので、油断は出来ないし、こんなことを考えては不謹慎なのだが、勝ち上がれば3回戦で当たることになる法政二高が、北陵の目の前で圧倒的な打撃力を見せ、桜丘高校を5回コールドでねじ伏せたことを考慮すると、北陵もコールドで勝ち上がって、出来るだけ池田くんのスタミナを温存したいところだった。

2回に2点を追加して、いよいよ波に乗るかと思いきや、チャンスはありつつも、コールド勝ちとはいなかった。

上溝南も初戦で強豪の百合丘を倒して2回戦に上がってきたわけだから当然だが、土俵際で必死に粘って堪えたのだった。

それは明らかに北陵に肩入れしている管理人にとっても、泣けるような健気な戦いぶりであった。
(特に8回、6点差で尚二死二・三塁のビンチでのタイムの場面には「青春」を感じさせてもらったよ)

コールドにならないことによって、吉田くんが二度送りバントを決めるという近年の北陵ではまず見られなかった光景を目にし、片桐くんを9回二死からとはいえマウンドでの経験を積ませ、先攻ゆえに回ってきた9回オモテの攻撃では代打・代走のオプションも確認できた。

次戦は強豪私立の1つ、法政二高。

かつては柴田投手(のちに巨人に入団、「赤い手袋」で人気を博し、2000本安打を達成)を擁し、甲子園夏春連覇(その次の夏も準決勝まで進んだ)という輝かしい実績もある。

近年は甲子園にこそ出場はないが、一昨年もベスト8入りしている学校だ。

松島監督に勝つための条件を訊いてみた。
「ある程度打たれるのはしかたないでしょう。とにかく喰らいついていくしかないですね。3番・池田と今日は打てなかった4番・野元がどれほど相手にプレッシャーを掛けられるか、に懸かっていると思います」

待ちに待った強豪私学との対戦。

あらゆる力を結集して戦ってくれることを切望します!

 
今日も泣きたくなるほど暑かったです...
いつも思うことだが、試合前の整列をしたあと、2時間も経てばいずれかは敗者となる運命だ。そこが夏の高校野球のせつなくも美しいところなんだけど...
勝って校歌を歌う北陵の選手たち
  
  
毎年のことながら控え部員・マネージャー・保護者・応援団・チア・ブラスチーム・現役生・OBといった不可欠なピースが揃っている北陵野球部。羨ましい...
 
  
  
  
バントを2つ決めた吉田くんは背番号16ながらそのキャッチング技術を買われて先発捕手に。次戦もいいところで決めてネ。ちなみに、試合会場となった大和引地台球場は別名「ドカベンスタジアム」。前回訪れた時、管理人は危うく命を落とすところだった[詳しくはこちら
 

7/14 鶴嶺,2年生たちの劇的成長で初戦完勝
 
 
上記スコアを見れば鶴嶺の楽勝のようにも思える。

しかし、試合というのは「生き物」なので、ここに至るきっかけは間違いなく存在した。

管理人が思うところは2つ。
それはいずれも初回に起こった。

1つは1回表、鶴嶺先発の若林くんのピッチングだ。

管理人がこの試合を大きく左右すると考えていたのは、鶴嶺投手陣の制球であった。

彼らは皆2年生で夏の経験はない。
そういう経験のなさが、特に初戦の序盤でフォアボール連発による崩壊を引き起こす可能性はゼロとは言えなかった。

管理人の悪い予感が的中しそうになった。
若林くんが先頭打者に対してボールを3つ続けてしまったのだ。

ここで崩れてしまうとゲームそのものも壊れる可能性があった。

そこを2つストライクで踏ん張り、最後はセンターフライで切り抜けた。

最初の打球を捌いたのがキャプテンの両村くんであったことが、鶴嶺の硬さをほぐし、両村くんの肩に懸かるプレッシャーをも和らげたはずだ。

気がついてみると、若林くんは7回1死までノーヒット、デッドボールこそ2つあったが、散発3安打の完封であった。
つくづく、野球は投手、を感じさせるゲームでもあった。
 
  
  
  
鶴嶺先発メンバー。左上から順にピッチャー若林くん、キャッチャー小林くん、ファースト小澤くん、セカンド佐藤くん、サード添田くん、ショート飯島くん、レフト瀬戸くん、センター両村くん、ライト鈴木日奈太くんの9人
 
もう1つのきっかけは思わぬところにあった。

1回ウラ、鶴嶺先頭打者の鈴木日奈太くんがレフトへの強烈なヒットを放ち、「さぁ嫌らしい鶴嶺野球の始まりか」と一瞬思ったのだが、その打球を金沢のレフトが後逸。

両翼98メートルの横須賀スタジアムの最深部へと転がったボールが戻って来たのは、打者走者の日奈太くんがホームを 駆け抜けたあとだった。
  
 
これで流れは完全に鶴嶺に傾いた。

ただ、エラーをした金沢高校のレフト・菅野くんの気持ちは察して余りある。
3年生最後の大会の最初の打球を捌くことになって、緊張感もあったろう。

彼が今後野球を続けるかどうかはわからないが、時間が経ってからでもいいから、少なくとも人生の教訓を1つ得たのだと、思ってくれることを願う。

今でも語り草になっている、1979年、甲子園での箕島(和歌山)−星陵(石川)戦での星陵・加藤一塁手の落球は、直後の同点ホームランを呼び、箕島の春夏連覇へと繋がったため、彼の苦悩は何年も続いたそうだが、それを逆手に取って営業に活かすことにしたそうだ。

是非、乗り越えて欲しい。

さて、絶好の展開となった鶴嶺は2回、先頭の飯島くんがヒットで出ると、若林くんがきっちり送り、小林くんのショートゴロの間に三塁へと進んだ所に、添田くんがタイムリーヒット。

理想的な得点の取り方で2点目を挙げた鶴嶺は、着々と得点を重ね、ビッグイニングがなくても「真綿で首を絞める」という体の攻撃で5回までにリードを5点と広げた。
(管理人はかつてこれでもか、というほどバントで送る攻撃を「雨だれ野球」と評したが、これに加えて「真綿攻撃」というカードも手にしたと見ました)
 
  
大事な局面で今年もきっちりバントを決めた鶴嶺。サードコーチャーは3年の鈴木輝くん。今日はいっぱい手を回す機会があった
2点目を奪うタイムリーヒットの添田くん
 
結局、5−0のまま鶴嶺が勝利し、2年連続の初戦突破を果たした。

守りの破綻もなく、特に三遊間とセンターはひじょうにいい動きだったように思えた。

ダブルプレーも2つ成立させ、ピックオフプレーなどの切り札を出さぬまま、余裕を持って勝ち切った印象だが、そこには昨夏4回戦まで勝ち上がり、監督・チームの経験値が上がったが故の矜持もあろう。

1度勝ったくらいではぬか喜びしない、気持ちを引き締めにかかる言葉も多々あった。

◇両村主将
目標のベスト16まで、ようやく一歩目です。今日は守りについてはよかったのですが、バッティングは全くダメだったので、次戦頑張ります。

◇鈴木日奈太くん
(流れを作ったね、という言葉に)ありがとうございます。次もそうなれるよう、頑張ります。

◇若林くん
今日は余計なフォアボールも出さず、守りにも助けられていいピッチングが出来ました。
次は強豪私学なので、より一層コントロールに気をつけて投げたいと思います。

◇亀山監督
いろいろとうまく行き過ぎた感もありますね。
ひとまず、1回勝つという最低限の使命は果たしてホッとしてはいます。
鎌倉学園戦では松田で行くことも考えています。

◇安藤コーチ
まだまだ雑なところも目立ちます。
また、理事の方や審判員に注意される行動(ガッツポーズやハイタッチ)で、せっかく盛り上がったテンションを下げるようなことも慎まないと、勝ち進むのは難しいですね。
鎌倉学園戦では、絶対に気持ちで負けず、先制することが勝つための条件になると思います。
また、走塁でどれほど相手にプレッシャーを掛けられるか、も大切ですね。
 
  
試合後の挨拶をする両村主将、亀山監督、安藤コーチ
 
勝利の裏で
 
これは試合後の管理人の腕である。

腕時計をしていたところだけ白く見えるのがわかるだろうか。
これまでいかに日に当たらない生活をしていたかが窺われる写真だ。

何が言いたいかというと、管理人のひ弱な日常生活が図らずもこの日の暑さを物語っている、ということである。

夏が暑いのは当たり前なのだが、ここ数日は尋常でないように思われる。
 
それは選手の体調にも大きく影響した。

ショートの飯島くんは6回の守備機会で打球を処理したあと、足がつって歩けない状態になり、やむなく7回から交替した。
(それまでの動きが軽快だっただけに、観客も驚いていた)

これは戦前から懸念されてはいたことだが、強烈な暑さに加え、人工芝による照り返しも激しく、水分補給をしていてもこの状態は不可避なのかもしれない。

試合中、投手の若林くんを含め、6選手が足がつるという状態だったようだ。

また、8回ウラの攻撃で二塁手の佐藤くんが顔面にデッドボールを受け、骨折(亀山監督・談)。

「万全でいって、ようやく戦えるかどうか、という相手ですので、痛いですね。しかし、やるしかないので、何とかやりくりしてみます。」とのこと。

中1日の鎌倉学園との2回戦。

どんな戦いをしてくれるか、とても楽しみなのだが、同日(15日) は全く同じ時間帯に北陵の初戦があり、そちら(大和引地台球場)へ行く予定になっています...

世の中、うまくいかないものです。

にしても、北陵の相手が百合丘ではなく上溝南になったのは予想外でした。
(上溝南関係者には激しく申し訳ない言い方ですが)

北陵の初陣も見てきますね。

鶴嶺野球部関係者の皆さん、初戦の勝利おめでとうございます。

また、お声掛け頂いたたくさんの方、飲み物を差し入れて下さった保護者の方々、ありがとうございました。

次戦での健闘をお祈り致します。
  
  
ピンチらしいピンチはほとんどなかったが、8回表はこの試合唯一のエラーが出て、内野陣がマウンドに集まった。ちなみに、次戦で当たる鎌倉学園はかなり多くの選手がこの試合をチェックしに来ていた