北陵高校 7/4up ■鶴嶺高校 6/21up
 

■過去ログ<野球部特集>■ 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
■過去ログ<高校野球雑記>■ 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

自らを支える言葉を見つけて欲しい
 
2010.6.21 記・管理人
 
15歳〜18歳の少年たちが、自らを律し鼓舞するための言葉と出合い、その言葉を咀嚼した上、実践するというのはかなり難易度の高い所業である。

それを考えると、プロゴルファーとして大活躍する石川遼選手は『言行一致』の出来る数少ないプレーヤーであり、彼の言語センスは絶賛ものである。

管理人は学習塾の講師として子どもたちの前に立って話をする機会が多いが、何年やっていても言葉を伝える難しさや言葉そのものの持つ力の不可思議さを日々思い知る次第である。
...未熟ということですね。

人間が言葉を生み出したきっかけは、他者とコミュニケーションを図るためであったと想像されるが、のちに自らとの対話(=思考)に言葉が利用されるに至り、人間は言葉に支配されることも受け入れることになった。

少年たちは幾多の言葉と出合い、それらを無意識のうちに取捨選択してやがて“座右の銘”となる珠玉の言葉と巡り合う。

『努力は俺を裏切らない』

鶴嶺高校野球部ベンチ脇にひっそりと置かれていた帽子のつばにはそう書かれていた。

誰のものかはわからない。
それはさほど重要ではないだろう。
しかし、帽子の持ち主はその言葉と何かの契機で出会い、呪文のように唱えつつ、日々の厳しい練習に励んでいるのかもしれない。

その帽子からそんなことを考えていた。

管理人の高校時代(驚くなかれ、陸上部のキャプテンだった)の部活用座右の銘は『相手も高校生』というものだった。
中にはケタ外れに強い選手もいたし、持っている記録だけを比較すれば100回やっても全敗すると思えてしまう選手もいた。
(陸上競技というのは、数字で能力に相当するものをハッキリ示されるため、逃げ隠れできないツラさがある。しかし、それが陸上競技の最大のよさでもある。他者との勝負だけでなく、昨日の自分とも勝負できるといった...)

しかし、所詮は高校生だから、ちょっとした出来事で何かが変わるかもしれない。
現に、練習ではどうやっても超えられなかった壁を大会で突破したこともあったし、持ち記録で自分より数段上の選手に勝ったこともあった。

何か実体のない空虚な言葉は、どうも座り心地が悪い。
そういう意味で、「相手も高校生」というのはあまりランキングが高くない位置にいる者にとっては気持ちを楽にさせる効果のある言葉であった。

今年、甲子園を目指すチームは186校。
かつては200を超えるチームが参加していたが、少子化の影響で徐々に減少。
とはいえ、全国一の激戦区であることに変わりはない。

一人ひとりの球児が自分を支える“言葉”と出合って、何とかその時点での力を出し惜しみすることなく闘って欲しい。
難しいということは十分承知はしている。
しかし、難しいからやらない、というのでは生きている価値が激減してしまう。

自分にもちょっとしたプレッシャーを掛けつつ、彼らの懸命な姿を追いたいと念じている。

2010.7.4up

初戦:7/12(月)藤沢八部球場 相手:県立多摩高校
選手:49名 マネージャー:7名 監督:松島勝司 部長:馬場祐一 主将:高山雅彦 [敬称略]

排気量小さいが,エコカー野球で勝利を目指す 松島勝司監督
 
松島監督の野球観は独特のものがある。

曰く「本当は10対9で勝ちたいんですけど、現実的にはなかなか難しいので、5対4で何とか勝てれば。」

曰く「ピッチャーはインコースを必ず突く。その方がリスクが少ないからです。ホームランの1本・2本打たれてもいいじゃないか。それよりアウトコースに集めて連打されてしまう方が余程嫌ですよ。」
 
曰く「去年、1点差の9回、厚木高校がワンアウト一塁からバント(詳しくはこちらを)してくれた時は助かりました。私なら絶対にバントしない場面ですから。」

曰く「ヘタな選手はバントできません。打った方が断然いい結果が出ますよ。」

といった具合だ。

松島監督の願いは常に『強豪私学に勝つ』というものである。
それを成し遂げるという目的のため、おそらくはその指導法は模索され、現在の打撃重視という基本戦略に至ったものと想像している。

とにかく犠牲バントは滅多にやらない。
アウトを一つ相手に渡すのが惜しい。

多くの高校野球の監督がバントを基本戦術の中に取り込んでいるが、少なくとも管理人は北陵高校赴任以降の松島監督がそうするのを見たことはない。
それがどうやら今年はちょっとバントもするらしい...

管理人「まあ、チーム事情もあるのでしょうが、先日の鶴嶺戦では初回からバントしてましたね。」
松島監督「今年は大串(章人くん:3年ショート)と住友(秀平くん:3年センター)の1・2番コンビで何とか一死三塁という形を作って得点に結び付けたいというのがありまして。ただ、やっぱりバントさせられるのは限られた選手だけですね。」

管理人「今年のチームについて、監督の手応えはどうですか?」
松島監督「毎年、大黒柱と呼べるような選手がいるものですが、今年に関してはそれがいません。全体的に排気量が小さいですね。コンパクトでエコカー的とでも言いますか。ただ、逆に言うと、突出した選手がいない分、競争は常に存在するので、チームとしての伸び代は大きいと思いますよ。」

管理人「1年生の深澤(誠)くんをベンチに入れましたが、どういった期待がありますか?」
松島監督「彼はバッターボックスに入った時の雰囲気がいいんですよ。何かやりそうな、というか。それって大切なんです。ピッチャーでなく打者で1年生をベンチに入れるというのは、実際に使うという想定もしています。彼だけでなく、今年の1年生はやんちゃな子が多いですね。バッティングセンスはあると思いますよ。2年生はちょっと優等生というか。それでも葛城(祥太郎くん)が4番に入ったりはしてますけど。3年生はもっとメロメロになってしまうかと思っていましたが、意外にも頑張ってレギュラーポジションを掴んでいますね。かなり伸びたと思いますよ。」

管理人「投手陣はここ2年、橋場くん・國正くんという“エース”がいましたが、今年はいかがですか?」
松島監督「左の大石(青希くん:3年)と右の陸野(おかの嘉義くん:2年)が2枚看板ですが、春以降2枚揃ったことがありません(苦笑)。彼らは公立高校ではかなり上位の資質があると思いますよ。大石は中学時代は野球をやっていましたが、故障したこともあってバドミントンをやってました。2年の秋にバドミントン部から『やっぱりどうしても野球がやりたいので入れて下さい』と言って入りましたが、やはりセンスはかなりいいものを持っていますよ。ケガもだいぶよくなってきたので、期待しています。」

管理人「初戦は多摩高校ですが、秘策といったものはありませんか?」
松島監督「そうですね。出来るだけ普段の力を出せるように、ということですね。相手もかなりいい評価を得ている学校ですから、もちろん侮れません。」

管理人「初戦を勝てば、2回戦は第一シードの創学館。一昨年痛い目に遭わされていますが...」
松島監督「ん〜、創学館は一番倒したい相手ですね。野球をする環境がケタ違いに整っていますから。勿論、それだけ野球に対する厳しさも持っているわけですが。」

やはり、強豪私学への並々ならぬ対抗意識はメラメラと燃えている。
まず、7月12日の初戦を勝ち上がって、勢いに乗って創学館と戦いたいものですね。

管理人も万難を排して応援に行きますね!
 
 
今年の二枚看板。陸野嘉義くん(左)と大石青希くん

“青年よ大志を抱け” 馬場祐一部長
 

 
慶應大学文学部卒。27歳。国語教師。

と言えば、ちょいと蒼白い文学青年を想起するやもしれないが、どうも彼は少し違うらしい。
ノックバットを持ち、ブンブン振りまくる。

慶應高校−慶應大学野球部出身、と言えばその姿を理解できるのかもしれない。

だが、人はどの学校を出たかという点だけでは当然量れない。
そこには彼なりの挫折や苦悩もあったはずだ。

管理人「慶應という恵まれた環境で野球をやってきて、なぜまた公立高校の先生になろうと?」
馬場部長「大学時代は自分もベンチに入れるかどうか、といった選手だったので、ヘタな子が成長してゆく姿を見てみたいという気持ちがあったのだと思います。」

管理人「やはり、高校野球の指導者になることが教員になることへのモチベーションになっていたわけですか?」
馬場部長「はい。今は勉強、修行の身で、いずれは監督をやってみたいという気持ちがあります。」

管理人「今年のチームについてはいかがですか?」
馬場部長「今年は守備にはまとまりがあるのではないでしょうか。センターラインは安定していると思います。その上で打撃で勝とうとするスタイルは松島先生が築かれたもので、理に適っていると思います。」

管理人「北陵高校、或いは北陵野球部というのはどう感じられますか。」
馬場部長「野球にしても勉強にしても潜在的な能力は高いと思います。ただ、その技術を発揮できないもどかしさも感じます。おとなしく、ほどほどのところで満足してしまう傾向にありますね。」
 
管理人「というと、もっと自分を出せ、といったような?」
馬場部長「そうですね。私学に負けないだけの練習もしていますが、性格的にのんびりしていて、自ら壁を作ってしまうところがあるので、それを突き破ってひと皮剥ければかなりやれると思います。」

管理人「どうすればそれを具現化できるでしょうか?」
馬場部長「例えば、この夏は初戦を勝てば2回戦が第一シードの創学館が相手です。この2回戦を勝てばメディアが大きく取り上げてくれるじゃないか、といった前向きなイメージで意識を上げていければ...」

管理人「なるほど...。ありがとうございました。」

神奈川県では新卒採用された学校では5年間を一つの任期としているため、彼が北陵にいられるのはあと3年。
彼が北陵野球部に来たことによって、間違いなくいい意味での波紋は生じたはずだ。
北陵野球部のためにも頑張ってもらいたいが、今持っている情熱を携えたまま、その後素晴らしい指導者になってもらいたいと切望する次第です。

また会いましょう!

背番号12。最後の夏に懸ける想い by captain
 
主将の高山雅彦くんの背番号は12。
ポジションはキャッチャー。

高校野球に於いて、この背番号の意味するところは「ベンチスタート」ということである。
それはけして彼が望んだことではないであろうが、だからこそ見えていることもあるものだ。

管理人「今年の投手陣はどうですか?」
高山主将「大石は変化球のコントロールがよく、考えた投球ができます。陸野はストレートのキレがあり、スライダーを外に、ストレートを内に投げ分けることができます。葛城はサイドハンドにしてからコントロールが安定してきました。」

管理人「どういう練習をしているのですか?」
高山主将「月・金は7時間なので打撃中心に。水・木は6時間なので打撃だけでなくノックなどで守備も練習します。」
 
管理人「打撃練習が多いのは、松島監督が打ち勝つ野球を標榜しているからかな?」
高山主将「そうですね。守備は普通のことを普通にやってくれれば、と思います。打つ方については、ツーアウト二塁で確実に還ってこられるような走塁もかなり意識してやっています。」

管理人「どんな野球をしたいですか?」
高山主将「最低でも5点を取って打ち勝つ野球です。ピッチャーのフォアボール、守りのエラーが続かないようにすれば強豪私学にも立ち向かえると思います。」

管理人「最後に、北陵高校野球部とはどんなところか教えて下さい。これから進学先を決める中学生のためにもお願いします。」
高山主将「僕自身がほとんど迷うことなく北陵を選びました。それは中学時代から北陵の試合などを見ていて、ここで野球がやりたいと思ったからです。入ってみて、元気がよく、一生懸命で、野球以外のこともきちんとやれるところだとわかりました。楽しく、いい仲間ができる最高の3年間を送れる場所だと思います。」

ありがとうございました。
また試合会場で会いましょう!
 

笑顔でいることの大切さ by managers
 
現在、北陵高校はマネージャーだけで7人という大所帯。
その中で3年生である鈴木ゆかりマネ(湘洋中出身)と川村友里子マネ(萩園中出身)の二人は、ともに中学時代はバレー部だったが、野球が家族を結び付ける環境に育ち、北陵高校という場所で必然とも言える巡り合いをした。

管理人「まず、なぜ野球部のマネージャーをやろうと?」
鈴木マネ「父が野球をやっていて、兄も浅野高校で野球をやっていたので、自然と。」
川村マネ「父が野球の監督で、兄が日大藤沢で野球をやっていましたし、弟は今藤沢西で野球をやっていて、野球をやることが当たり前のような環境なので(笑)。」

ちなみに、川村さんのお父さんは高校時代甲子園に出場経験があり、昨年まで藤沢西高校監督。
08年に南神奈川大会ベスト4まで勝ち進んだのは記憶に新しい。

管理人「北陵高校を選んだのはなぜ?」
鈴木マネ「公立高校で強いところ、というイメージでした。」
川村マネ「兄の志望校だったので。」

管理人「マネージャーをやっていて辛いことはありましたか?」
鈴木マネ「野球そのものは苦ではないのですが、2年生の秋に自分の体調が悪くなってしまい、その時はやめなければならないかも、と思いました。」
川村マネ「部員からどう見られているのか?マネージャーって本当に必要なのか?とかって考える時もあって、そういう時は辛いと思うこともありました。」

管理人「逆にどんな時、やり甲斐を感じるかな?」
鈴木マネ「ありがとうって言われるとすごく嬉しいですね。それと、誕生日を祝ってくれたり、仲間としての絆を感じられた時ですね。」
川村マネ「ちょっとしたことでも頼られると実感があって嬉しいです。悩んでいる部員が結果を出した時も自分のことのように嬉しいですね。」

管理人「いよいよ夏の大会も近づいてきましたが、どう闘っていきたいですか?」
鈴木マネ「マネージャー全体で精一杯の応援をしたいです。選手には日頃の成果を発揮してもらいたいです。初戦に勝てれば2回戦は一昨年負けた相手でもある創学館なので、何とかしたいですね。選手たちには毎年漢字二文字の入ったお守りを渡すのですが、今年は『主躍』という文字を考えました。皆が主役で躍るように野球をやって欲しいです。」
川村マネ「尊敬している1級上の先輩マネージャーたちに『笑顔でいることが大切だよ』と言われ、確かにそうだなと思いました。それで、自分も笑顔でいようと。あと、いつか終わりは来ますが、その時に後悔しないようにしたいと思います。」

管理人「誰か、特に期待する選手はいますか?」
二人「ベンチ入り出来なかった唯一の3年生である山田稔選手です。チームの盛り上げ役をやってくれてます。」

管理人「では最後に、北陵野球部っどんな所か教えて下さい。これから進路を決める中学生のためにもお願いします。」
二人「優しく、お互いを気遣い合える、絆の強い仲間が出来る場所だと思います!」

ありがとうございました。
また球場で会いましょう。
 
左が川村友里子さん、右が鈴木ゆかりさん

コーチの見立て
 
コーチの大川恭亮くんは北陵野球部OBで就任3年目。
誠実な人柄で、いつもにこやかに応対してくれる。

管理人「今年はどうですか?」
大川コーチ「ん〜、正直言ってここ数年ではポテンシャルは低いように思います。」

管理人「とすると、どういった戦法でこの夏戦おうということになりますか?」
大川コーチ「野球センスのある選手をセンターラインに集めて、まず守備に安定感を出すということと、大串・住友の1・2番で得点できる形を作りたいですね。」

管理人「バントも辞さず、ということかな?」
大川コーチ「はい。何人かにはバントの指示が出ることもあります。」

 
管理人「多摩戦については?」
大川コーチ「大石が復活できるかどうかが鍵になるかと思います。陸野との継投が基本になるかと思いますので。」

管理人「キャプテンの高山くんについては?」
大川コーチ「普段から練習態度がしっかりしていて、キャプテンとしての資質は十分です。僕の知る限り、ベンチキャプテンは初めてですが、彼ならやってくれると信じています。」

管理人「ありがとうございました。また試合の時に会いましょう。」
 

  

各ポジションの選手たちがノーミスでいかないと終わらないシートノック

  
右はペットボトルに半分ほど水を入れたもの。これを使ってインナーマッスル強化に励むらしい
  
左)テニスボールを使ったバッティング練習 中)マシンを使って硬球を打つ練習環境も整ってきた
 
さあ、戦いは近づいた。悔いなき日々を!


2010.6.21up

初戦:7/18(日)横須賀スタジアム 相手:厚木西高校−磯子工業の勝者
選手:36名 マネージャー:5名 監督:亀山博人 部長:山口真也 主将:金田隆太 [敬称略]

新監督のもと、さらに徹底したバント戦術⇒ブレない野球を
 

「雨だれ作戦」

かつて管理人が命名した鶴嶺野球部の基本戦術(詳しくはこちらを参照あれかし)であるが、昨年相模原の新磯高校から赴任された亀山博人新監督はそれをさらに積極的に攻める姿勢で推進しようとしている。

「雨だれ」とは、「雨だれ石を穿つ」 (力なき人でも、長い間根気よく努力をすれば最後には成功するということ)の短縮形。

ここでは鶴嶺野球部が無死またし一死でランナーが出ると、これでもか、と言わんばかりにバントで進めてゆくことを意味する。
これを繰り返しやられると、守っている方はやがてキレてしまったり、破綻したりで遂には相手に得点を与えるに至る。

実に嫌な戦術なのである。

 
亀山監督の本職は国語教師。
高校時代はピッチャー。
尊敬している人物は原貢さん(かつて三池工業と東海大相模で全国制覇。原辰則現巨人監督の父)。

前任の新磯高校では生徒たちが積極的に部活動をやる雰囲気ではなく、簡単には部員が集まらなかったため、鶴嶺に赴任して部員がたくさんいることが新鮮だったと言う。

部員は2・3年生が各10名、1年生が16名。計36人。
マネージャーは2・3年各1名、1年3名。計5人。

何しろ亀山監督は二十数年の野球部顧問経験の中で、20という背番号(背番号の与えられる上限は20名)を与えたことが一度しかないという境遇の中で野球と、そして生徒たちと対峙してきた。

また、監督が横浜市立桜丘高校1年に在籍していた1980年、夏の神奈川大会5回戦で当たったのが、菊地原孝祐さん(元鶴嶺高校監督−現深沢高校監督)がキャプテンとして率いていた鶴嶺高校で、ひじょうにしっかりした野球をやる学校という印象もあったようだ。

だからこそ、鶴嶺は眩しい存在でもあり、ある程度完成されたチームなのではないかと思ってやってきたが、意外にもそうではないことに驚きもし、また、そこに自分が赴任してきた意義があるのかもしれないと考えたそうだ。

ちなみに、監督がいた桜丘高校というのは公立校の中では有数の戦績を残している学校(1999年に決勝まで勝ち上がったほか、ベスト8以上が7回!)で、のちに近鉄・巨人で活躍する阿波野秀幸投手は監督の同級生。
「打倒!強豪私立」という“公立魂”を一つの共通意識として、かなり厳しい環境で練習してきたわけだ。

そしてそれは現在の鶴嶺高校グラウンドでも徐々に発揮されつつある。

個人ノックMAX30分

管理人が訪ねた日、ちょうどその洗礼を受けている選手が二人...
ノッカーと周囲の選手たちは厳しくも優しい声を掛けつつ、ノックを受ける方は気絶寸前といった風情。

これは監督自身も高校時代に経験した練習法で、最早スキルがどうのこうのではなく、メンタルを鍛えるためのものだと部員たちにも伝えてから実施している。
 
さて、冒頭のバントについて、もう少し深く監督に尋ねてみた。

管理人「トーナメントですから、バントの重要性は十分理解できますが、先日の鶴北戦(北陵高校との交流試合。6月12日にあった)では1回から4回まで、4イニング連続で無死一塁から送りバントを仕掛けて4回連続成功させ、ついに4回に1点取りましたね。あそこまで徹底させる意図というのは何でしょうか?」
亀山監督「相手によって野球を変えたりはしない、ということですね。」

管理人「というと?」
亀山監督「目標は“打倒!強豪私立”です。そういった強いチームのことを考えると、いいピッチャーからはそう得点できません。もしそれでも勝つチャンスを掴むとすれば、出たランナーを得点圏に送ることでプレッシャーを掛け、相手のちょっとしたミスも含めて1点ずつ取ることが必要かと。そこにバントを基本戦術に取り込む価値があります。」
個人ノックを受けるの図。最後の方はフラフラになるが、そこからが頑張りどころ
送りバント4回目にして、遂に1点をもぎ取る(6/12の対北陵戦)
 
管理人「それはビッグイニングを作れる可能性を低くしても、1点を取ることのできる可能性の方を上げる、という意味ですか?」
亀山監督「その通りです。もちろん、バントが内野安打になったりで結果的にビッグイニングになることもあるでしょうが、相手がどこであろうとコールドゲームで勝つ、というようなことを期待はしません。相手によって野球を変えれば、いざという時に機能しませんから。」

管理人「なるほど。それはある種、監督の哲学ということですね?」
亀山監督「そうです。それと、個人的にはゲッツーを食らうのが嫌いなんですね。ゲッツーを取れば相手は乗りますから。そういった要素を減らしておく、というのも一つにはあります。」

管理人「ということは、こちらも相手をある一定の得点で押さえなければ接戦勝負に持ち込めない、ということにもなりますが。」
亀山監督「おっしゃる通りです。ですから生徒たちには4対3で勝つ野球をするぞ、と常々言っています。ピッチャーはフォアボールを出さない、キャッチャーはピッチャーと協力して盗塁をさせない、というところから始まりますね。」

管理人「現在はバッテリーを含めた守備面はいかがですか?」
亀山監督「まだまだ課題は山積みです。これからの1か月で、そこを中心に鍛えていこうと考えています。」

管理人「緒戦の2回戦は厚木西が磯子工業に勝って上がってきそうですが。」
亀山監督「実は新チームになってから昨秋・今春の2度対戦していまして、9−1、10−2の大差で負けているんですね。特に4月の試合では11三振を喫していますので、戦力的には相手が上ですが、こちらも得た情報からどうにかできるものもあると思っています。転んでもただでは起きない、捨て身で活路を見出したいですね。」

というわけで、野球談議は2時間近く続いたのであるが、亀山新監督が目指す方向性といったものが伝わってくれれば幸いである。
しっかりと生徒のことを考え、野球によって人間形成を図ろうという信念を感じさせてくれる監督のこれからに期待したい。

マネさん「平常心こそ大事」
 
マネージャーの石黒絵美さん(3年)は中学時代はバスケットボール部。
9歳年上のお兄さんが鶴嶺高校野球部出身ということもあり、よく応援に来ていたことから、すんなりマネージャーに。

管理人「ということは、結構野球のルールや戦術は理解してる?」
石黒マネ「そうですね。展開とかが読めて、それが当たるとちょっと嬉しいです(笑)」

管理人「去年は3年マネが二人いたけど、今年は一人。辛くてやめたいと思ったことはなかったかな?」
石黒マネ「確かに相談相手がいないということは辛かったですが、それよりも選手たちがきちんと練習しないような時に辛い気持ちになりました。」

管理人「それはどうやって解決したの?」
石黒マネ「キャプテンと常に相談して、けじめをつけてやるようにしました。」
 
管理人「ちなみに試合中ベンチではどうしているかな?」
石黒マネ「スコアをきちんとつけることが最大の仕事ですから、それに徹しています。」

管理人「マネージャーをしていて楽しいことって何ですか?」
石黒マネ「人の役に立つことが好きなので、“ありがとう”って言われるとすごく嬉しいですね。」

管理人「縁の下の力持ちって感じかな?そういう自分の性格を活かして、将来やってみたいことはありますか?」
石黒マネ「職業のことまでハッキリと意識したことはありませんが、ホテルでの接客やルームメーキングなどはやってみたいなぁと思っています。」

管理人「鶴嶺高校野球部のイメージを教えて下さい。」
石黒マネ「けじめはあるけど、上下関係がなくて仲が良い、ということでしょうか...」

管理人「では、最後に夏の大会に向けての気持ち・目標を教えて下さい。」
石黒マネ「とにかく一戦必勝です。いつも通りにやることが出来れば...と願っています。」

ありがとうございました。

キャプテン「コミュニケーションを大切にしたい」
 
主将はセンターの金田隆太くん。
昨夏は背番号18ながらゲームにも出ていた。

管理人「去年は10年連続初戦突破という偉業のあとで、負けられないというプレッシャーもあったかと思いますが、雰囲気はどうだったのかな?」
金田主将「やはり負けられないという意識はありました。でも、自分は2年生で試合に出させてもらっていたので、試合に出られない先輩たちに申し訳ないという気持ちが強かったですね。」

管理人「さて、君たちの世代から、また新たな10年を始めて欲しいと思いますが、現在のチームはキャプテンの目から見てどう映りますか?」
金田主将「公式戦で勝てていないですし、メンタルが弱いところもあります。正確に計算はしていないのですが、勝率は3割未満だと思います。」

 
管理人「その原因は何でしょうか?」
金田主将「守備が安定していません。締まったゲームもあるのですが、ピッチャーがフォアボールから崩れたり、エラーが絡んで失点したりすると、悪循環に陥って相手にビッグイニングを与えてワンサイドになってしまいます。」

管理人「それは厳しいね。夏に向けての課題もその辺りかな?」
金田主将「はい。守りを鍛えて、監督の言う4対3で勝つ野球をしたいです。今はチームとして成長しているのが自分でも感じられるので、野球に対する意識をさらに高めて勝ちに行きたいです。」

管理人「監督さんはかなりバントを徹底するようだけど、それはどう?」
金田主将「バントを基本的な戦術に取り込む意図は何度も言われて理解できてきたと思います。送りバントだけでなく、セーフティもスクイズも多く仕掛けています。バントも攻めの一つですから。」

管理人「初戦は厚木西になりそうだけど、何かそれに備えていることは?」
金田主将「練習試合で2回大敗している相手なので、メンタルで負けないようにしたいですね。それと、こちらから崩れないように、日頃の練習でもコミュニケーションを図ってやっていきたいと思います。」

管理人「では最後に、中学生たちに鶴嶺高校野球部のよいところをアピールしてもらえますか?」
金田主将「鶴嶺高校では真剣に甲子園を目指すという高校野球ならではの楽しさが味わえます。送りバントも単なる犠牲ではなく、そこに楽しみもあることがわかるのが鶴嶺野球です。是非、体験にも来て下さい。」

ありがとうございました。
大会では 力を出して、真剣に楽しんで下さいね。期待しています。

  
左)練習前のランニング 中)試合で投げる坂口投手 右)期待の1年生ショート高橋くん