西浜高校 ■鶴嶺高校 ■北陵高校

過去ログ=
 
03年度野球部特集 ◇03年度独善的観戦記
 ◇04年度野球部特集 ◇04年度「管理人、高校野球に口を挟む」
05年度野球部特集 ◇05年度高校野球雑記

06年度瀕死の野球部特集

野球部特集アップに際して
 
 何しろ高校野球はスゴイと思う。

 これだけ価値観(という言葉で片付けてよいものかは考える余地もあるが)が拡散したご時世にあっても、人々の耳目を一気に集める要素を常に潜在的に持っている。

 昨夏のことは記憶に新しい。ハンカチ王子こと早稲田実業の斎藤佑樹投手とマー君こと駒大苫小牧の田中将大投手との投げ合いによる甲子園決勝再試合は神の配剤とも思えるドラマティックな展開で、ここ数年(正確には松坂以降)甲子園での戦いにはあまり興味を抱けなかった管理人すら、ネットでその試合経過を追ってしまったほどだ。
(吹奏楽コンクールや野球部の取材のために、塾の時間割をこっそり動かす管理人も、甲子園の試合を観るために授業を休講にすることは、さすがにないよ...。だから、授業の合間にネットで確認していた次第です。ちなみに、うちの塾には代ゼミのサテライン講座を映し出す受像機は山ほどあるが、実はテレビは1台もないよ。)

 で、まさか2年続けてあんなことにはなるまいと思いつつ、先日携帯を新しいものに換える際、思わず店員さんに「テレビが見られるヤツにしてちょーだい」と言ってしまった。これで、万一の際は授業をやりながら野球観戦が出来るってわけだ。
(って、本当に見たら生徒も怒るわな...)

 つまり、 あの試合が契機となり、テレビ付き携帯が少なくとも1台売れた、ということになる。

 こういうのを“経済効果”と呼ぶに違いあるまい。

 さらに、今年の「野球部特待生問題」も、その内容はともかく、スポーツ関係者はおろか、文化人から酔っ払いのオヤジから、果てはガキに至るまで全国的かつ世代縦断的な話題を提供した。もしこれが「なぎなた部」であったり「物理部」であれば、問題にもならなかったはずだ。

 この一件はプロ野球の西武球団によるアマチュア野球関係者への金品バラ撒きに端を発したものではあるが、図らずも、一般市民に「野球だけは他のスポーツと扱いが違う」「野球は高体連に属していなかったんだ」ということを認識させる効果があった。

 そう。野球だけは「高野連」という別組織があり、独自のルールで動いているのであった。

 ベンチにすら入らない選手が起こした暴力沙汰で必死に掴み取った甲子園をもフイにするという恐ろしいまでの「連帯責任制度」は今も健在である。古い体質と言えばそれまでだが、管理人には頑なに自らの原理に忠実であろうとする姿は滑稽でありつつ、ちょっと美しくも思える。どうせなら、「うちはうちのやり方でいきますから」と、もっと毅然と振舞ってもらいたかったけど。

 いやいや、何が言いたいかといえば、「やっぱり高校野球は特別だ」ということです。フィールドでプレーする選手だけでなく、どれだけ周囲の人間(親戚縁者・メディア・大学関係者など枚挙に暇がないぜ...)を巻き込んでいくか。

 ま、いろいろと高校野球の持つスゴさについて語ってはきたが、管理人のやっていることは、その末端も末端、純粋さが色濃く残る公立高校野球部で頑張る人たちを見つめるという行為でしかない。

 それでも何かが伝わると嬉しいものです。よかったら、今年もお付き合い下さいませ。
 


2007.7.8up
 
部員:35名(マネージャー2名) 監督:武富永典 部長:堀達也 主将:上園姿

チーム力自己評価 投手力:3.5 守備力:4 打撃力:5 機動力:3.5
初戦:7月11日12:00 藤沢八部球場 対鎌倉高校

 
出したい,力・・・若い新監督で伸び伸び野球を
 
 昨年取材をサボッた関係で(悪意はありませんが)、最新の記憶は2年前ということになる。

 2年前の夏、茅ヶ崎勢は5チームが揃って2回戦を勝ち抜けるという史上初の快挙を遂げた。勿論、西浜も2度校歌を聞いたわけであるが、あの夏、西浜には水野くんという大エースがいた。

 今年、西浜には彼のような大黒柱と呼べるほどの存在はないかもしれない。しかし、この夏は攻守の総合力では2年前を凌駕するチームが出来上がった。

 問題はその実力を発揮できるかどうか、ということに尽きる。

 チーム関係者であれば誰もが今年のチームの打撃力が近年では最高に仕上がっているということはわかっている。ところが、その力を公式戦になると発揮できずに夏まで来てしまったのだ。

 野球に限らないが、対人スポーツというのは「いかに相手に存分の力を出させないか」ということが勝つための大きなファクターになっている。だから、多くの高校球児たちが口にする「自分たちの力を出したい」というのは、最も困難な事柄であるとも言える。公式戦であれば尚更である。

 しかし、だ。 この夏の大会から、西浜高校で采配を振るうのは3年前の卒業生であり、まだ弱冠二十歳の武富永典監督である。

 これが潜在能力がありながら、それを発揮できずにいた西浜を飛躍させる契機となるかもしれない。若い新監督は年齢が近いこともあり、部員と同じ目線で話もできる。選手たちがリラックスして試合に臨むという効果を生む可能性も高いのである。

 冒頭のヘッドコピー『出したい,力』というのは、何かのきっかけで眠っていた能力を発揮して、大いなる達成感を得たいという多くの高校生たちの願いであり、西浜高校野球部への期待も込めたタイトルなのである。
(使っている写真も2年前の西浜高校のものである)

 残念ながら、訪問日には新監督とは会えなかったのであるが、部長・部員・マネージャーからの話で「伸び伸び野球」が出来そうな雰囲気を多大に感じる。

 初戦は鎌倉高校と。そこで勝利すると第1シードで今春甲子園に出た日大藤沢が相手となるので、かなり厳しいブロックではあるが、壁は高いほど登り甲斐もあるというもの。臆することなく自分たちの野球をやって欲しいと願う。

失敗を恐れるな!
 
 部長の堀達也先生は社会科教諭。ご自身は野球の経験が全くない。だから、「早く野球のできる顧問の先生が来るのが一番」と仰るが、部員たちを見守る目は限りなく温かい。

 また、吹奏楽部の演奏会などでもしばしばお姿を拝見するが、それは夏の大会で応援してもらっていることへのお礼の意味もあるそうな。

 堀部長に今年のチームについて、いろいろと伺ってみた。
 
管理人「チームの特徴を教えて下さい。」
堀部長「私が見てきた3年間では間違いなく総合力では一番ですね。水野がいた時は運よく勝ち進むことが出来ましたが、やはりワンマンに近かったですから。その点、今年はまとまりがあり、上位打線には大きな信頼感があります。何より無失策試合が増えたというのが心強いです。」

管理人「そうした力というのはどういう練習によってついたものでしょうか?」
堀部長「冬場に随分と走り込みをやりましたからね。その厳しさが今に反映していると思います。」

管理人「課題があるとすれば?」
堀部長「その力を出し切れないことですね。力を出すことが全てですし、それが勝利にも直結しますから。」


管理人「力が出せない要因というのは何でしょうか?」
堀部長「いろいろあるとは思いますが、公式戦では萎縮してしまう傾向がありましたね。それが若い監督になって『失敗を恐れるな』という雰囲気が浸透してきましたから、この夏は何とか力を出してくれるのではないかと期待しています。」

管理人「この選手が活躍するとチームが盛り上がる、という子はいますか?」
堀部長「ショートで1番の小澤ですね。スローイングをはじめ守備は安定しているし、打撃面でもドラッグバントありバスターあり長打ありで、派手というか魅力がありますね。彼次第でチームが乗れるかどうか決まってゆくのではないでしょうか。」

管理人「部員たちへ伝えたいことはありますか?」
堀部長「彼らは様々な犠牲を払って練習してきました。だから、それに見合う満足感を得てもらいたいと思いますね。そのためには、繰り返しになりますが、自分たちの力を発揮することが全てです。全力を出し切って負けたのならいいのですが、力が出せずに負けると可哀相ですからね。」

管理人「では最後に、野球少年たちへメッセージをお願いします。」
堀部長「冬場の練習はちょっと厳しいけど、西浜では楽しく明るく野球が出来る環境があります。よかったら西浜に来て下さい。」
管理人「ありがとうございました。」

 訪問した日は1学期期末テストの真っ最中。お忙しい中、ご丁寧にお応え頂きありがとうございました。それにしても、力を発揮するというのは本当に難しいものですね。

 西浜野球部の皆さん、まず「その場に立てた喜び」を大切にして下さい。そうするとちょっと気が楽になるかもしれませんよ。

“絆”〜マネージャーの矜持
 
 代表マネは3年の一柳佳奈子さん。彼女は2級上のお兄さんが西浜野球部に在籍していたこともあってマネージャーになったが、やはりバレー部出身である。

 ま、だからと言ってどうというわけでもないのは他の2校のマネさんたちと同じです。

 ただ、野球というのをずっと身近に感じてきた彼女だからこその言葉の選び方や行動のしかたもあり、とても興味深いものがあります。
 
管理人「いよいよ最後の夏だけど、これまでの2年間と違うところはありますか?」
一柳さん「1年生の時は兄が3年生でしたが、実際にはよくわからなかったです。2年生の時にはいろいろと周りも見えてきて、1級上の先輩たちが引退を懸けているということに感情移入していましたが、それでも心のどこかにもう一年ある、という気持ちがあったように思います。今は、3年生にしかわからない気持ちで一日一日を過ごしています。」

管理人「3年生にしかわからない気持ちというのは?」
一柳さん「最後の夏、ということを考えずにはいられないですね。あとになってから高校時代には戻れないですから、後悔しないようにと。自分たちの野球をすれば勝てるんだと信じています。」

管理人「今年のチームを見ていて感じることを教えて下さい。」
一柳さん「私が見てきた3年間で一番バッティングがいいチームです。何か打ってくれるのではという期待が持てるチームですね。」

管理人「君が考える野球部マネージャーの仕事って何だろう?」
一柳さん「練習の時は、先の先を読んで行動するということです。選手や監督さんに言われてから動いているようではダメですね。試合の時は、ベンチで集中している選手の邪魔をしないことですね。」

管理人「なるほど。ということは、影に徹するということかな?」
一柳さん「はい。試合中はベンチで選手に声を掛けることはしませんね。ベンチに戻ってくるまでに、もういろいろと言われているはずですから、私は静かにしています。」

 この話を聞いて、しばし感心した管理人であった。北陵は割と積極的な声掛けをしているようであり、鶴嶺では小さな声でたまに、ということだったが、一柳さんは全く声を掛けないということである。

 勿論、一概にどの方法がよいかということを論じたいわけではないし、チームカラーといったものも関係するから、優劣などないが、実に興味をそそられる話である。

管理人「では最後に、西浜高校野球部をひとことで表現するとどうなりますか?」
一柳さん「お互いを信じる力が強く、絆が深い。監督が替わって、自主性がつき、選手も明るく伸び伸び野球をやるようになったと思います。」
管理人「ありがとうございました。」

 選手たちに力を発揮させてあげたいという慈愛に満ちた言動でした。迎える3度目の夏。可能ならベンチの中の彼女を見てみたいと思います。

見てくれ俺たちの晴れ姿。打ち勝つぞ〜キャブテン・上園姿
 
 
 
 キャプテンはキャッチャーで3番打者の上園姿くん。「姿(すがた)」という名前が管理人の表現者魂を揺さぶるのに十分なインパクトであった。命名の由来を聞いておけばよかった...

管理人「チームの仕上がり具合はどうですか?」
上園主将「投手陣が大崩れしなくなり、守備もエラーをしなくなりました。春以降大幅に改善されたと思います。打撃には自信があるので、1試合5点以上取れるチームになったと思います。」

管理人「部長先生も同じことを言っていましたが、バッティングには相当自信があるわけだね?」
上園主将「はい!強いチームと当たっても、中軸が機能すれば負けないと思います。」

管理人「君はキャッチャーでもあるから、投手陣をリードするという仕事もありますね。どうやって引っ張っていきたいですか?」
上園主将「強気で内角を攻めたいです。外ばかりだと踏み込まれますから。」

管理人「いよいよ大会が近づいてきたけど、君自身は高校卒業後も真剣勝負の野球をやる予定はありますか?」
上園主将「(しばしの沈黙...)やりたい気持ちもありますが、これが最後の夏ですかね...」

管理人「そうですか。では、初戦の鎌倉高校戦についての抱負をお願いします。」
上園主将「相手の鎌高もなかなかバッティングがいいので、打撃戦を制したいですね。先のことは考えず、まずは初戦突破をしたいですが、出来るだけ長くやりたいです。そのためには一つでも多く勝ちたいですね。」
管理人「ありがとうございました。」

 新監督は「年が近いので野球以外のことも相談しやすい」というのが上園くんの感想のようで、やはり伸び伸びと野球が出来ると感じているとのこと。

 インタビュー後のフリーバッティングでは快音を連発していた上園くん。その打棒に期待していますね。

 
 
 




2007.7.8up
 
部員:36名(マネージャー3名) 監督:加藤裕志 部長:山口真也 主将:内田匡信

チーム力自己評価 投手力:4 守備力:5 打撃力:3 機動力:4
初戦:7月13日14:30藤沢八部球場 対逗子高校

 
8年連続初戦突破!安定感あるチーム作り
 
 鶴嶺高校野球部。それは真摯に声を出し、突出した選手がいなくても接戦をモノにする安定感を想起させる。

 で、調べてみたら、ナント!8年連続で初戦を突破するという快挙を成し遂げているではないか...。他校をすべて調べたわけではないが、おそらく少なくとも一般的な公立高校でこれだけコンスタントに勝つチームは稀有な存在であるはずだ。

 そんな鶴嶺高校であるが、この数年でベンチ入りする監督・部長がたびたび替わってきたという歴史がある。

 「部活ネット」が取材に伺うようになって5年目であるが、当時は“カリスマ”と称される菊地原先生が監督、加藤先生が部長という鶴嶺OBコンビであった。それが一昨年・昨年は小松先生が監督、加藤先生が部長となり、この夏は昨年新卒採用の山口先生が部長となり、加藤先生が監督に就任することとなった。

 常に加藤先生がチームと触れ合っていたので部員たちに違和感はない。むしろ、加藤監督での初勝利を目指してモチベーションも上がりつつあるところだ。

 さあ、9年連続の快挙はなるだろうか。

 組み合わせを見ると、初戦は逗子高校と。それを乗り切ると順当に行けば3回戦で第2シードの立花学園と当たる可能性が高い。

 実は4年前、鶴嶺は猛打の主将・池田くん(現・中央大野球部)を擁して、やはりその年もシード校だった立花学園を倒している。そういった実績もあり、初戦突破だけでなく、もっと大きな夢を叶えてくれるのではないかと期待している。

  
左)6月に行われた鶴北戦(北陵との交流試合)で最終回に集中打を見せた鶴嶺打線。見事逆転勝ち
中)訪問日の打撃練習 右)投球練習

若い新部長は慎重居士
 
 昨年、新卒採用で鶴嶺高校に赴任し、今年から部長となった山口真也先生は理科の先生である。

 秦野高校時代は野球部に所属し、3年生の夏はサードコーチャー。得点が入るかどうかの鍵を握るポジションであり、レギュラーとは違った視点からチームを見ることを学習する役割でもある。

 実は教員を目指すことになったのも、サードコーチャーをやっていたことで後輩たちにいろいろと話をする場面を経験し、教えることの面白さを知ったことが大きな要因だったそうだ。
 
 ちなみに、監督の加藤先生は国語の教員で、こりゃ文武両道を目指すには最適の環境と見ました。

管理人「顧問に体育科の先生がいないことは大きな問題とはなりませんか?」
加藤部長「はい。そのことは全く問題ありません。却って、体育科の先生たちにお気遣い頂いて、見守ってもらっているように感じます。」

管理人「チームの現状を教えて下さい。」
加藤部長「勝率で言うとほぼ五分程度ですが、ここ1ケ月ほどは勝ちが込んできました。打撃は上向きで、1試合ごとの課題をクリアしようという意識が出てきましたね。」

管理人「課題というのはどういったことなのでしょうか?」
加藤部長「どんな場面でも、その時に出来ることをきちんとやろうということです。それが守備であっても、攻撃であっても1点の攻防にこだわる姿勢ですね。その積み重ねが結果として接戦を呼び、引き離されずについてゆくことで最後に逆転できることもあるわけですから。」

管理人「北陵との試合(鶴北戦)を見せてもらいましたが、8回終了時点までリードされていたのを最終回、集中打で逆転 勝ちしましたね。ああいうのは理想形に近いと?」
加藤部長「そうですね。そういう形に持ち込むには、野球の練習は勿論ですが、普段の生活から、という意識が一人一人に徹底してきたように思います。」

管理人「生徒たちによく話すことというのはどういうことですか?」
加藤部長「ん〜、僕自身がなかなか自信を持てないことについてはあまり話さないのですが、『自分のやることは周りに伝わるし、周りのやることも自分に伝わる。相互に影響するんだ』 ということはよく話しますね。野球というのは一つずつのプレーは個人のプレーですが、その結果はチームのものになりますから。このことに限らず、自分が実際に感じたことは話すようにしています。」

管理人「なかなか慎重ですね。」
加藤部長「ええ。そういう性格なんですね。若いんだから、もっと前に出てもいいのかなぁと思ったりもしますが。今後はもう少し積極的になりたいとは思います。」

管理人「この夏、鍵を握る選手がいたら教えて下さい。」
加藤部長「それは全員なのですが、具体的に誰というより、ラッキーボーイが出現してくれることをちょっと期待していますね。下級生は割とリラックスしてやれるので、意外な子がやるのかもしれません。」

管理人「3年生は最後の夏となりますが、何か伝えておきたいことはありますか?」
加藤部長「そうですね、本当の意味でチームで戦える喜びを知ってもらいたい、ということですね。」

管理人「最後に、野球少年たちにメッセージをお願いします。」
加藤部長「思い切り野球を楽しんで下さい。鶴嶺高校に来れば、さらに思い切り野球が出来るよ。大学・社会人ではなかなか難しいことでも、高校野球というのはそういうものですから。」
管理人「どうもありがとうございました。」

 本当に言葉を慎重に選んで答えて下さいました。鶴嶺高校赴任前からこの「部活ネット」を読んで頂いていたようで、話はスムーズでした。

 加藤監督・山口部長のコンビがこの夏“鶴嶺旋風”を巻き起こすことを期待したいと思います。

成し遂げたい気持ち〜マネージャーの矜持
 
 マネージャーは3年生の森成美さん。彼女も中学時代(円蔵中)はバレー部に所属していた。今回取材させてもらった学校だけで少なくとも4人がバレーから野球部マネに転じている。

 バレーボール人口が減ってしまい、管理人などは既にそのことを心配していたりするが、それはまた別の機会に書くことにします。

管理人「なぜ野球部のマネージャーになろうと思ったのかな?」
森さん「自分でスポーツをやれる限界みたいなものは感じていたのですが、部活はどうしてもやりたいなぁと思って。で、マネージャーをやるなら野球部以外考えられなかったですね。」
 
管理人「途中で嫌になったりしなかったかな?」
森さん「ん〜、実は同じ学年で一緒にマネージャーをやっていた子が辞めてしまい、ちょっとしたストレスがあったり、新チームになって選手に思いが伝わらないこととかもあって、一時はやめようかと思っていました。」

管理人「ほう。それをどうやって乗り切ったのですか?」
森さん「負けず嫌いですし、プライドもありますが、何より『最後まで成し遂げたい気持ち』が強くありました。最後の夏までやってこそ得られる達成感も得たかったですね。だから、辞めようかと思ったりはしましたが、実際に辞めるところは想像できませんでした。」

管理人「マネージャーとして最も大切なことは何だと思いますか?」
森さん「(しばし考えて)一緒にやっているという意識でしょうか。日頃は練習がスムーズに行くように配慮したり、ボール直しをしたりとかが中心になりますが、一緒に練習に参加する意識が大切なのだと思います。」

管理人「試合中、スコアを付けることが最重要だと思いますが、選手への声掛けとかはしますか?」
森さん「実際には、野球のことが全部わかるわけではありませんから、迷うことが多いのですが、場面によっては小さい声で言うこともあります。だいたい試合後によい点を褒めるようにしていますね。あと、水分補給には気を遣います。」

管理人「では、最後に。鶴嶺高校野球部をひとことで言うと?」
森さん「仲がよくて、やる時はやる。ということでしょうか。」
管理人「ありがとうございました。」

 彼女はこれまで存在していた練習メニューを見直し、変えるべき点は少しずつ改良してきたそうです。そうした小さな工夫の積み重ねがコンスタントな成績を残す要因の一つになっていることでしょう。試合では、君自身が脱水症にならないよう、水分補給して下さいね。

1点を笑う者は1点に泣く〜キャプテン・内田匡信
 
 鶴嶺高校キャプテンはセカンドで三番打者の内田くん。安定した守備力と勝負強い打撃で、勿論戦力としても中心である。

管理人「端的に言ってどういうチームなんだと思う?」
内田主将「バッテリー中心のチームだと思います。配球について指導者の方にいろいろと教わったので、そこがカッチリいけば、戦えるチームだと。」

管理人「スタンスというかこだわりのようなものはありますか?」
内田主将「とにかく防げる点は絶対に防ぐ、というところですね。だから、牽制・投内連携・内外連携といったことに時間を掛けています。」
 
管理人「攻撃の方では?」
内田主将「バント・走塁・リードというところをしっかりやっているところです。」

管理人「つまり、攻守に於いて1点にこだわっていきたい、ということかな?」
内田主将「その通りです。だから、意識が低くならないように、常に考えたプレーをしたいですね。」

管理人「さて、君はセカンドというポシションだけど、セカンドの面白さというのを教えて下さい。」
内田主将「ランナーのことを常に考えて動かなければならない、というのは面白いかもしれません。ワンプレーごとに考えて動くようにしています。」

管理人「キャプテンとしての苦労は何かありますか?」
内田主将「練習は皆ちゃんとやってくれるので問題はありませんが、全体のことを考える人が少ないかもしれません。意識の低さが出るようなところでは、厳しく言うようにしています。」

管理人「では最後に、この夏の目標を聞かせて下さい。」
内田主将「皆の先頭に立って、ピンチの時などには積極的に声を掛けていきたいです。まずは初戦を突破して、ベスト16以上には進みたいと思います。」

管理人「ありがとうございました。健闘を祈ります。今度は勝利者インタビューさせてね!」
内田主将「はいっ!」

 本人曰く「慎重なんだけど雑な性格」なのだそうだ。野球では深刻になってもしかたない場面もあるから、うまくバランスを取って1日でも長い夏を楽しんで下さい。




2007.7.7up
 
部員:60名(マネージャー6名) 監督:松島勝司 部長:加藤優 主将:山ア啓
チーム力自己評価 投手力:4〜5 守備力:3〜4 打撃力:3〜4 機動力:4
初戦:7月15日14:30相模原球場 対「武相−川崎商」の勝者

 
昨年の雪辱を誓う
 
 昨夏、北陵は第3シード校として大会に臨んだ。

 シード校になるということは、春の大会でベスト16以上に勝ち残ったということであり、一定レベル以上の力がなければそのポジションは掴み取れない。

 しかし、その「シード」というのがくせ者でもあるのだ。

 まず、シードというのは農作物などを育てる際、優良な種子(seed)を離れた位置に蒔くことに由来する。

 神奈川県の場合、シード校は全部で16チームあり、それらはトーナメント表の離れた位置(つまり、早い段階ではシード校どうしが対戦しないようにという配慮)に蒔かれる。で、特権として1回戦が免除されるわけだ。

 この「1回戦免除」があるので、シード校は7回勝てば甲子園に行ける。
(1回戦から戦うチームは8回勝たねばならない...!)

 しかし、2回戦から登場するということは、初戦は既に一度勝って意気揚々としているチームが相手ということになる。ここに落とし穴がある。

 神奈川には「シード校とやるなら2回戦で」という言い伝え(?)があるほどで、強豪校でも初戦は固くなるものなのである。しかも、公立高校でシードされるということは、春の大会では振るわなかった強豪私立(彼らは夏に向けて相当な意気込みで鍛えてくる)と初戦で相まみえる可能性もあり、実はそれほどありがたくないことであったりもするのだ。

 昨年の北陵はまさにその「ありがたくないシード」であったとも言えよう。初戦の相手は、秋・春と当たり、1勝1敗の五分であった鎌倉学園であり、彼らは予想通り1回戦を一蹴して勝ち上がってきた。実力が五分なら勢いがある方が強い、というのは言い古された言葉でもあるが、真実でもあろう。北陵は鎌倉学園の前に屈し、鎌倉学園はその勢いを加速させてベスト8にまで勝ち進んだ。

 そして今夏。

 北陵は昨秋の大会で部史上最高タイのベスト8にまで上り詰めた。しかし、春季大会では県1回戦で敗退したため、シード校ではない。

 ところが、組み合わせは昨夏をリフレインするかの如く、「1回戦免除&2回戦が私立強豪(武相)」となってしまった。勿論、川崎商が武相に勝つ可能性もあるが、武相に勝たねば今年も短い夏となってしまうと考えるのが妥当であろう。

 北陵も公立高校の中ではかなりの部員数(マネージャーを含め60名)がいるが、武相はナント121名。甲子園に出た経験もある。さらに、今年になってからの練習試合でも6−9で負けている相手である。

 最早、これは「試練」と呼ぶにふさわしい。

 頑張れ!北陵野球部

昨夏、鎌倉学園に敗れたラストシーン。今年も試練の組み合わせだ。
  
左)鎌倉学園相手に力投する永島投手。今年は背番号1を背負っての最後の夏。
中)ゲームセット 右)試合後の最後のミーティング。選手たちも泣くが、監督も泣くんだよ...

名言『俺は毎年泣いている!』 by 松島勝司監督
 
 松島監督は就任4年目。

  これまでの戦績を見ると、1年目の夏、4回戦進出(ベスト32)。この時は前年の優勝校・横浜商大高校相手に大善戦の末に敗れた。2年目は3回戦で延長戦での敗戦。そして3年目の昨夏は前述の通り、初戦となった2回戦で鎌倉学園に敗れた。

 当たり前ではあるが、甲子園に出るチーム以外は必ずどこかで負ける。そして、負けたらそこでチームは解散となる。監督というのはその敗戦を毎年受け入れざるを得ない、そういう存在であるとも言える。

今年の鶴北戦後、選手を叱咤する監督
 
 それが冒頭の言葉となって表れたものである。 つまり、選手は1度(最大でも3度)泣けば済むが、監督は毎年毎年敗戦を受け入れ、チームの解散に立ち会わねばならない。因果な商売だ。

 しかし、それを何年も続ける人たちがたくさんいるところを見ると、けして嫌なことばかりでないとも言えよう。松島監督も勿論そういう一人なのである。

管理人「今年のチームはどうですか?」
松島監督「ん〜、投手・打撃ともに波が大きいのがよくも悪くも特徴ですね。波の頂点に近いところでゲームをすれば秋のようにベスト8にも行けますし、下がったところではコロッと負けますんで。」

管理人「その波を高値で安定させることが課題ということでしょうか?」
松島監督「そうですね。選手層が厚いとは言えないので、現有戦力の底上げとコンディショニングで初戦に全てを賭けたいですね。」

管理人「鍵を握る選手は誰ですか?」
松島監督「(エースの)永島ですね。キャッチャーの柴田に対しては全幅の信頼がありますから、永島を中心とする投手陣がいかにピークで投げられるかでしょう。」

管理人「最近、北陵野球部は好成績を挙げることも多く、公立の雄の一つと見られるようになりましたが、北陵特有のチームカラーというのはどういったものでしょうか?」
松島監督「これといって毎年同じような特徴があるわけではありません。その年その年でチームは変わるものですから。そういう中でもコンスタントに成績を出し続けると、それが伝統と呼ばれ、北陵カラーということになるんでしょうが。特に夏に結果を出したいですね。夏は負ければ終わり、ということもあってプレッシャーも大きいですし、注目度も違いますから。そこで結果を出すことで、繋がってゆくものがあると思います。」

管理人「変なことをお尋ねしますが、北陵野球部というのは先生にとってどういう存在なのですか?」
松島監督「僕はここで骨を埋めるつもりなんです。年齢的にもそういうことになると思いますし。だから、北陵で甲子園に出て教員を辞めるというのが夢というか、目標ですね。」

管理人「今年は私学の特待生問題が大きく取り上げられましたが、何か感じるところはありますか?」
松島監督「ん〜、特にはないですが、そういう強豪私学を野球がやりたくてこのチームに集まってきてくれた子たちで倒すというのが目標ではあります。それを励みにしながら、文武両道でいきたいです。ただ、北陵は入るのが難しいところがありますからね。」

 「愛される野球部」を標榜する松島監督。監督を長らくやっていると、家庭サービスとかはどうなっているのかなぁ、という素朴な疑問も持っていたので、禁断の質問もしてみた。

管理人「土日はほとんど野球部の活動に費やされていると思いますが、家族とのありようというのはいかがなものですか?」
松島監督「諦めてもらってます(笑)。家族旅行をしたという記憶がほとんどありませんから。ただね、下の子が小さい頃はサッカーをやっていたのですが、中学に入ってから野球をやるようになりまして、そこからいろいろと話ができるようになりましたね。毎年、引退した選手たちが家にやってくるので、それを見て野球をやってくれるようになったのかなぁ。で、いろいろな指導者に出会って、そこからオヤジの生き方なんかを少しずつ理解してくれたのかもしれませんね。それは本当に嬉しかったですよ。」

 立ち入った話を聞かせてもらい、申し訳ありませんでした。

 話からもわかる通り、松島監督は毎年夏の大会で敗退したチームの3年生を自宅に招いていろいろと話をされるそうだ。人情家であり、監督曰くは「そこが僕の弱さなのかもしれませんね」。しかし、管理人はそういう松島監督が好きである。
(恋しているというわけではないので誤解なきよう)

 管理人の去り際、監督は「甲子園に出たら、インタビューに来て下さい」 と仰ってくれた。勿論、授業を全て休講にしても行きます!健闘を祈ります。

細腕繁盛記!エース永島、最後の夏に賭ける
 
 
背番号1は永島洋平くん
 
 エースナンバー1を背負う永島洋平くんは1年時からベンチ入りしてきたが、いよいよ最後の夏となった。管理人が初めて見た頃より背が伸びたなぁと思い、尋ねてみると「高校に入ってから5センチは伸びました」とのこと。コーチの佐藤亮太くんに言わせると「体重がもっと増えるといいんですが...」ということらしいが、細腕エースも悪くない。

管理人「調子はどうですか?」
永島くん「今は悪いですね。腰が痛むので、体重移動のしかたからフォームを確認しているところです。」

管理人「現在の持ち球は?」
永島くん「カーブ、シュート、スライダー、スクリューです。」

管理人「シュートも投げるのか...。自分のピッチングの特徴をどう考えていますか?」
永島くん「スピードというより、コンビネーションとコントロール重視ですね。」

管理人「左投手は有利な点があると思いますか?」
永島くん「はい。対角線のストレートを広く(ストライクに)取ってくれるので。自分でもそれをピッチングを組み立てる上で利用しますね。」

管理人「では、大会に向けての意気込みを聞かせて下さい。」
永島くん「一戦一戦を大切にしてゆきたいです。コントロールをしかっり投げたいですね。」

 彼を見ていると、ピッチャーはスピードが全てではない、ということを思い起こす。かつて、オリックス・阪神に在籍し、11年連続二桁勝利(通産176勝)を挙げた星野伸之投手を彷彿とさせる。

 北陵投手陣は彼だけでなく、3年和田くん(左投げ)・2年橋場くん(右投げ)・1年國正くん(右投げ)と人材も揃っている。細腕エースを中心に、是非、武相高校に立ち向かってもらいたい。

“野球狂”の詩〜マネージャーの矜持

 
なぜか修学旅行先で買ってきた「野球狂」Tシャツをお揃いで着る3年マネコンビ。左・稲毛理沙さん、右・石川千穂さん
 
 マネの石川さんは元円蔵中バレー部キャプテン。稲毛さんは元松林中バレー部キャプテン。実は彼女たちだけでなく、今年取材させてもらった3校のマネージャーは全員中学時代はバレー部。この奇妙な一致は何かと考えてみたが、別に意味のない偶然であるという結論に至った。(じゃあ書くなって?)

 しかし、なぜバレーでなく野球部を選んだのかには興味が湧く。

石川さん「部活引退後に高校野球を見て感動しました。」
稲毛さん「小さい頃から野球好きでした。」

 なるほど全うな答えです。

 彼女たちだけでなく、全国の多くの女子マネは野球以外の部活経験者であろう。女の子は自分でやりたくてもなかなかプレーする機会には恵まれない。しかし、高校野球だけでなく、プロ野球やメジャーリーグ、果ては野球マンガに至るまで、見る機会はやたらと多いというのが日本という国である。 これを広告業界では「強制認視」と呼ぶらしい。

 つまり、「見る機会が多い」⇒「脳内に刷り込まれる」⇒「ほなやってみよか」 という図式が出来上がるというわけだ。

 というわけで(どういうわけだ?)、彼女たちに話を聞いてみました。

管理人「最後の夏を前に今はどんな気持ち?」
二人「カウントダウン状態です。負けた時のことを考えると怖くなります。公式戦だから特別ということはありませんが、この夏の大会だけは特別な想いもあります。」
(彼女たちは回答を二人で考えて意見を一致させるというプロセスを踏んでます)

管理人「君たちにとって野球というのはどんなスポーツなのかな?」
稲毛さん「試合に出ている9人以外の人、ベンチに入っていない人たちも一緒になってゲームを作る、というスポーツかなぁと思います。ベンチワークや伝令ひとつ取っても、意味があることなんだと少しわかるようになりました。」
石川さん「先にほとんど言われてしまいましたが、諦めない気持ちが大切な競技だと思います。時間制限のないスポーツなので、何点開いていても追いつける可能性はありますし。また、負けている時はその可能性を捨ててはいけないとも思います。」

管理人「ゲーム中のマネージャーの仕事というのは何だと考えていますか?」
二人「スコアをつけることが最大の仕事ですが、笑顔は大切にしています。元気のない部員には『次だよ!』などと声掛けはします。 」

管理人「では最後に、北陵野球部をひとことで言うと?選手へのエールでも結構です。」
二人「(しばしのミーティング後...)『闘心』ですかね。」
管理人「とうしん?それはどういう意味なのかな?」
二人「昨年まで部長だった小林先生がよく『北陵生は優しすぎるから、もっと闘う心を持たなければだめだ』とよく仰っていたんですね。それで。」
管理人「なるほど、小林語録その1というわけですね。ありがとうございました。また球場で会いましょう。」

 野球と部員たちへの想いが滲む二人でした。

 北陵は彼女たちをはじめ、各学年にマネージャーが二人ずついるという素敵な環境。管理人もこんな環境で部活をやりたかったですなぁ...

 ちなみに、インタビュー開始時、稲毛さんに名前を尋ねたところ

 「稲毛理沙です。逆から読むと“さりげない”です」

 とネタの披露をしてくれた。お茶目な君に幸あれ!

意外にやります。うちの打撃〜キャプテン・山ア啓
 
 
キャプテンの山ア啓くん
 
 今年の主将はセカンドの山ア啓くん。内野の要であり、勝負強い5番打者でもある。

管理人「今年のチームの特徴を教えて下さい。」
山ア主将「守備のチームだと思っていましたが、秋の大会から打撃が好調でした。漠然と打つ、ということではなく、頭を使って打線の繋がりを考えられるチームですね。」

管理人「守りの方はどうですか?」
山ア主将「バッテリーは経験豊富で信頼感も高いので、内野が締まれば...」

管理人「キャプテンとして苦心したことはあるかな?」
山ア主将「公立で上下関係というのもありませんから、皆がいろいろとやってくれて、大きな苦労といったことはあませんでした。ただ、皆個性が強いので、我が強く出過ぎないようにミーティングを重ねて改善してきました。」

管理人「現チームをひとことで言うと?」
山ア主将「元気、ですかね。とにかく気持ちを前面に出そうというチームだと思います。」

管理人「では最後に、この大会での目標を教えて下さい。」
山ア主将「初戦の相手が武相になると思うので、気の抜けたプレーは絶対に避けたいです。練習してきたことを出せればいい勝負にはなるはずなので。でも、それが出せるかどうかは気持ちの面に掛かっていると思います。後悔したくはないので、力を出したいと思います。」
管理人「ありがとうございました。」

 さあ、いよいよ本番間近。締まった内野守備で投手陣を盛り立てて下さいね。

  
左)接戦を想定してのバント練習・投内連携は怠りない 中)実戦を考えての素振り
右)期待の1年生投手・國正くん。帽子を飛ばして投げる様は昔の堀内投手(前巨人監督)を思い出させる。と言ってわかる人は結構トシです...