管理人、いきなり言い訳の嵐
 
【瀕死の野球部特集】
 
2006.7.9up
 
 ん〜....なんだかとても忙しい....

 どのくらい忙しいかというと、

(1)自分がどれくらい忙しいのかを暢気に振り返ることが難しいほど忙しい

(2)「茅ヶ崎地区全校取材」がモットーの野球部特集で、今年はシード校の北陵しか取材できなかった、というくらい忙しい

 と言えば通じるだろうか(たぶん通じないと予想します...)

 で、その北陵高校すらも、取材後1週間以上塩漬け状態にあり、生涯アップできないものかとも思いましたが、何とかここで大会開始当日ギリギリのタイミングではありますが、アップに至る模様です。

 あ、ちなみに上記タイトルは「瀕死の野球部」ということではなく「特集が瀕死」という意味です。日本語は難しいですね。

 おっ、だいたい「特集」ってのは「特別に集める」ことだった。既に初手から矛盾を帯びていました。訂正はしませんが、お詫びはしておきます。
 
 この夏、取材に伺えなかった各校野球部の皆さん、ごめんなさい。特に初出場となるアレセイアには是非ともその意気込みを聞きに行きたかったのですが...

 昨夏、公立5チームが全て2回戦を勝ち抜けるという初めての快挙を成し遂げた茅ヶ崎勢。今年はどこがどれほどやってくれるか楽しみでもあります。

 大会は近隣の球場でタイミングが合えば、出来るだけ出掛けたいと願っています。「自分たちの力を発揮する」というのは、何よりも困難な命題ではありますが(なぜなら相手はそれをさせないように必死ですからね)、悔いの残らないようプレーしてもらいたいと切望します。

 あ.....陳腐でスンマセン.....

03年度野球部特集 ◇03年度独善的観戦記
 ◇04年度野球部特集 ◇04年度「管理人、高校野球に口を挟む」
05年度野球部特集 ◇05年度高校野球雑記



部員数:50名 マネージャー:6名 監督:松島勝司 部長:小林豊 嘱託顧問:佐藤亮太 コーチ:小澤直人
主将:山口勇貴 初戦:7/13(木)正午 鎌倉学園−五領ケ台の勝者

 
監督・コーチ・主将が異口同音
『複数ポジション制』の効用
 
 どうやら今年の北陵は各選手に複数のポジションを守る練習を課しているらしい。

 その効用は素人が考えてもいくつかは存在する。

(1)けが人が出た時にすぐ対応できる⇒チームの選手層に厚みが出る
(2)各選手がそれぞれ違った視点から野球を見られる⇒チーム全体の野球観が広がる
(3)違うスキルを使うことで身体バランスがよくなる

 今年の北陵野球部は、それを切り口の中心として見ると面白いかもしれない。
 
  
6/17に行われた鶴嶺・北陵交流戦(通称・鶴北戦)より。特に麦島(中)・永島(右)両投手には期待が掛かる
 

戦い方が難しいシード校の初戦
相手は因縁の鎌倉学園
 
 ご存知の方も多いとは思うが、この夏、北陵は第3シード校となっている。

 もともと「シード」とは英語のseed(種、種をまく)であり、トーナメントなどに於いて最初から強豪どうしがぶつからないよう、配慮するというシステムである。

 つまり、北陵は「強豪」なのである。

 ところが、その強豪校ゆえ、実は戦い方は難しいものである。
 
 神奈川県の場合、シード校は全て2回戦から登場する。ある意味、それは特権なのであるが、悩みもあるものだ。

 「2回戦からの登場」の意味するところは、「対戦相手は一度勝ってきている」ということであり、精神的にも肉体的にもウォーミングアップができたチームを相手にしなければならないということである。

 しかも、その相手が昨秋・今春と続けざまに対戦し、互角の戦績である鎌倉学園(あくまで鎌学が1回戦の五領が台高校に勝つという前提だが)とあれば尚更である。

 これは最早、北陵に与えられた試練と言えよう。昨年は同じような立場で茅ヶ崎高校がノーシードながら強豪の湘南学院高校を相手に接戦をモノにして、最終的には5回戦まで進出(昨春選抜に出場した慶應に1点差の惜敗)したことを考えれば、吉兆と言えるのかもしれない。

 それを踏まえて、松島監督に「今大会の目標は?」とお尋ねすると、間髪入れずに

 「初戦が全てです」

 という答えが返ってきた。

 はじめに勝たなければ、その先はないのである。13日平塚球場での初戦が熱くなるのは間違いない。
 
静かなる野心
 
 高校野球の指導者にとって「甲子園」というのは一体ナニモノであるのか。

 永遠の問い掛けであるかもしれないが、訊かずにはいられない。この日、割に監督と長い時間お話しすることができて、今年のチームのことに加えて、そのあたりについてもいろいろと尋ねてみた。

管理人「今年のチームは監督から見てどう映りますか?」
松島「総合力のチームですね。突出した選手がいない代わりに、選手層はこの3年で最も厚いかと思います。」

管理人「選手層が厚いと、実際にはどういったメリットがありましょうか?」
松島「チーム内の競争が激しくなるので、それがスキルアップや精神力の向上に繋がります。実際の試合では、仕掛けが早くなりますね。ここで代打、という時にある程度任せられる選手が一人だけじゃない、というのは戦術面でも大きいです。」

管理人「鍵を握るのは、いつの時代も投手ということになりますね。松島監督も高校時代はピッチャーだったそうですが、今年の投手陣はいかがですか?」
松島「右の麦島、左の永島の二枚が揃うといいんですが、揃って調子がよかったことがないんです。調子が悪いなりに押さえられる、という力があればいいのですが、そこまでは難しいですから。高いレベルで戦うには二人の調子が揃って上がるということが必要でしょうね。」

管理人「継投を含めて、ということでしょうか?」
松島「それは状況にもよりますが、一人では苦しい場面もあると思います。」

管理人「麦島くん・永島くんに注文があるとすれば?」
松島「二人ともテンポよく投げるのが持ち味ですが、それが一本調子にならないように、ということですかね。けん制を入れて間を取るとか言うことも、意識してやれるとよいですね。チェンジオブペースといったことが出来ると、集中力も増しますから。野手に気持ちよく守ってもらうには、そういった配慮も必要でしょう。」

管理人「さて、いよいよ大会が近づきました。初戦は鎌倉学園と予想されますが。」
松島「どういう展開になろうとも、接戦でしょうね。ごまかしが利かない相手ですから、いかにこちらの力を発揮できるかに掛かっています。」

管理人「では、初戦にピークを?」
松島「そうですね。初戦こそ全てです。そのためのコンディショニングをしています。」

管理人「相手は一度勝っていますが、北陵は初戦。その辺のやりにくさはありますか?」
松島「あります。実戦経験が足りなくなるので、それは紅白戦などで補いたいと思います。」

管理人「一昨年は横浜商大というその前年に神奈川代表になった強豪チームとの4回戦での惜敗。昨年は愛川高校に延長の末敗れましたが、敗因というのは全く別のところにあったのでしょうか?」
松島「そうですね。横浜商大の時は、ヒット数で上回りながらの敗戦で、監督の責任でしたね。昨年は、正直言って受身になってしまいました。その愚は絶対に繰り返さないつもりです。」

管理人「さて、松島監督にとって甲子園というのは...?」
松島「公立校であっても目指せるところだし、目指すべきものですね。」

管理人「実際には、この30年以上、Y校を除いて公立が甲子園に出たことはありませんが、可能性というのはあるものでしょうか?」
松島「絶対にあると思いますよ。ないと思えば出来ないですしね。それには奇策を用いる、ということでなく、一つ一つのことを地道にレベルアップさせる以外ないでしょうが、例えば選抜の優勝校の横浜に10回やって2回勝つ力がつけば、甲子園も可能なのだと思います。1回だけならまぐれと言えますが、2回勝つなら、それはもうまぐれではありません。」

管理人「そうですね。公立高校もベスト8・ベスト4までは勝ち残ったりもしますが、やはり強豪私学相手に2度3度続けて勝たなければ甲子園には出られませんからね。」
松島「その通りです。ハートを強くして、一つ一つをレベルアップさせ、そこにプラスアルファ、運とかも含めて、そういったものが味方した時、甲子園というものが見えてくると思います。是非、公立でそれを成し遂げたいですね。」

 実に熱く語ってくれた松島監督。日頃はたいへん穏やかだが、内心には間違いなく“Silent Ambition”を抱いていると見ました。

 この夏の采配も注目していますね。
 
 

春を超える戦いを!
 

 キャプテンの山口勇貴くんは一塁手。第一印象から、落ち着いている。そういう人だからキャプテンになったのか、キャプテンになったからそうなったのかは定かではないが、練習後のミーティングなどを見ていても、整理力と統率力アリ。主将としての信頼度もひじょうに高いように思えます。

管理人「今年の北陵野球部をひとことで言うと、どうなりますか?」
山口「.....(しばし沈黙のあと)『全員野球』ですね。」

管理人「昨年の主将・小澤くん(現コーチ)は『繋いで勝つ』というキャッチフレーズだったけど、今年の特徴としてどんなことが挙げられますか?」
山口「みんな、複数のポジションをこなして、チームとしての層が厚くなったと思います。お互いがカバーし合える点が特徴だと思います。」

管理人「複数のポジションをやることの効果はどういったところにありますか?」
山口「視点が増えることが一番です。野手も投手の気持ちを考えたり、外野も内野の気持ちを考えたり。僕もセカンドをやってみて、気づいたこともありますから。」
 
管理人「初戦は鎌倉学園が予想されますが、どういった試合にしたいですか?」
山口「まずはよいコンディションで臨みたいですね。そうすればいい試合が出来ると思います。4点以上の差をつけられた方が厳しくなると思います。そうならないよう、こちらが4点差をつけられるような試合展開にしたいです。」

管理人「よかったら、戦績的な目標を教えて下さい。」
山口「春のベスト16を超えたいです。」

 とすると、必然的にベスト8・ベスト4という未知のゾーンですね。にしても、かなり冷静に分析する力があるようで、感心しました。グラウンドでも、熱くクールに戦って下さい。期待しています。

気迫で負けない!凡打の山を築け
 
 背番号1は右腕・麦島翔太くん(3年)。昨夏も主戦として完封勝利を収めるなど、経験値は十分。

管理人「まず、君のピッチングの特徴から教えて下さい。」
麦島「気迫で負けない、ということです。」

管理人「得意のボールは?」
麦島「スライダーです。」

管理人「初戦は鎌倉学園が予想されますが、どんなピッチングをしたいですか?」
麦島「いつも通りに、気迫を前面に出していきたいです。低目をついて、内野ゴロを打たせるようにして、無駄なフォアボールを絶対出さないようにしたいです。フォアボールはとにかく嫌ですね。」

管理人「最後の夏、目標は?」
麦島「甲子園です!」(力強く)
 


 どこかやんちゃなイメージのある麦島くん。まずは初戦のピッチングに注目です。

この夏、二遊間に注目!華麗なゲッツーを見せてくれ
 
 2006年型北陵野球部、管理人の個人的思い入れはと言えば、二遊間コンビに尽きる。

 セカンド・岡本創くん(3年)については一昨年の取材で、ショート臼井大輔くん(2年)については昨年の取材でそれぞれインタビューさせてもらったのだが、彼らが成長し、内野の要として迎えるこの夏は実に感慨深いものがある。

 彼らは管理人の高校時代(平塚江南高校)の同級生の息子たちなのである。

 彼らの親が野球をやっていたわけでもなく、申し合わせて北陵に進学したわけでもない。 住まいは茅ヶ崎でないその二人が同じチームで野球をし、揃って重要なセンターラインを守る、というのはある意味奇跡的でもある。

 何だか奇妙な感じがする....

 まずは臼井くんに話を聞いてみた。

管理人「去年は1年生でただ一人ひと桁の背番号をもらって、遠慮しているところもあったようだけど、今年はどうですか?」
臼井「前よりは遠慮しなくなりました。自分も3年生のつもりで、1球1球に集中したいと思っています。」


管理人「じゃ、セカンドの岡本くんにも、声を掛けたりしているわけね?」
臼井「はい。」

管理人「今年はどういう活躍をしたいかな?」
臼井「状況に応じたバッティングで打点を挙げたいです。」

 ひじょうにシャイな臼井くん。今年は打順も6番に上がり、守備だけでなく打撃も期待されている。「2年である彼がどれだけ働けるかは、大きな鍵を握っている」と、嘱託顧問の佐藤亮太コーチ。

 是非、攻守両面での活躍を祈ります。下級生が活躍するチームは勢いがつきやすいからね。

 次に岡本くんに話を聞いた。

管理人「いやぁ、ちょっとは大きくなったかな?一昨年は『体力的にもつのかなぁ』とちょっと思っていたんだよ。」
岡本「体はそんなに大きくなっていませんが、野球を辞めようとか考えたことはありませんでした。」

管理人「この夏は背番号4をゲット、おめでとう。以前は投手だったけど、いつのまにセカンドに?」
岡本「2年秋まではピッチャーもやっていたのですが、複数ポジション制でセカンドもやるようになりました。以前はサードをやったこともあったのですが、打球の回転とか連携プレーなどが全く違うので戸惑うことも多かったです。」

管理人「今はセカンドというポジションにも慣れてきた?」
岡本「はい。頑張ります。」

管理人「ところで、家ではよく野球の話をするの?」
岡本「はあ...。親父がよく話し掛けてきますね。」

管理人「そうか...。ま、親孝行だと思って、最後の夏も頑張ってね。」
岡本「はい。」

 右肘にアイシング。ちょっと心配ではあったが、どうやら大丈夫らしい。

 この二遊間で素敵なゲッツーが見られたら、それだけで管理人はちょっと幸せな気持ちになれるはず。そのためにも、麦島くんに、たくさん内野ゴロを打たせてもらうようにしないとね。
 
  
シャイな臼井くん(中)。バッティングもシュアになってきた。投手から転向の岡本くん(右)

マネージャーも最後の夏に全てを懸ける
 
 北陵にはマネージャーが各学年2人ずついる。これはある意味で理想的である。というのも、学年に途切れがなければ「伝承」という側面からは安心でき、同じ学年に複数いれば、一人で悩んで落ち込むこともなくなるからである。

 野球そのものの伝統というのは、実はこうした連鎖が形成されるところからも生まれるものだ。

 彼女たちが真剣であれば、それが鏡のように部員の真剣さを物語ってくれる。北陵は、少なくとも管理人の見る限り、この数年でひじょうにしっかりした土台が出来つつある。
 
 3年生のマネージャーは、原昌子さん(写真左)と鮫島千明さん(右)の二人。最後の夏に懸ける意気込みを聞いてみた。

管理人「マネージャーって辛くないっすか?夏暑いし、冬寒いし。休みないし。」
鮫島・原「野球が好きで、部員たちが好きなので、嫌だと思ったことはないですよ。」

管理人「辞めたいと思ったことない?」
鮫島・原「いやいや、本当にないです。」

管理人「続けられるのは、野球そのものが好き、ということに加えて、母性愛のようなものもあるのですかね?」
原「そうかもしれません。」

管理人「ゲーム中にマネージャーが出来ることというのは何になりますか?」
鮫島「合い間に選手に声を掛ける、ということは大切だと思います。」
原「まずはスコアを確実につけるという役目がありますが、ピンチの時に暗い雰囲気を一掃することもありますよ。」

管理人「いよいよ最後の夏。残酷な言い方になるけど、ある意味高3の夏の大会は『いつ負けるか』という戦いでもあるよね。負けたあとの自分を想像することってありますか?」
原「いつかは負ける日が来る、というのは頭ではわかっています。だから、悔いを残したくないので、出来ることは何でもしたいです。」
鮫島「負けたあとのことは恐くて想像できないです...」

管理人「うん。気持ちはわかるよ。」
原「野球部を辞めるということは、もうこのグラウンドに来ることがなくなるという意味でもあります(編集・注 北陵は校舎建て替えのため、現在は仮校舎で授業を受けている。グラウンドを使う部活だけが旧校舎グラウンドを使う)。仮校舎の方が坂の下にあるので、野球も見えなくなるし、寂しいと思います。だから、今を頑張りたいと。」

 うん。わかるわかる。

 球場で会ったら、また話そうね。

コーチ陣も充実
 
 大学4年の佐藤亮太コーチは、管理人のかつての教え子であり、4年前の主将。今年は母校・北陵に教育実習にも参上。生徒からの信頼も厚い。

 今年のチームについてのコメントをお願いした。

佐藤「投手陣と2年生のレギュラー組のデキが大きな鍵ですね。初戦から接戦が予想されるので、ミスをしないこと。ただ、萎縮してはいけないので、のびのびとやって欲しいです。」

 昨年の主将・小澤直人くんも今年からコーチとして加わった。選手時代とは違った視点から、現部員に何か伝えられることがあるのかを聞いてみた。

小澤「ええ。確かに選手の時はキャプテンでもあったので、かなり自分を抑えて、グーッと(視野を絞るような動作で)なっていましたし、それも必要なことだとは思いますが、気づいたことはアドバイスしています。 コンディショニングのことも言ったりしますよ。」

 とのこと。

 優秀なOBが指導者として加わることで、伝統も築かれ、活気も出る。さあ、いよいよ北陵の夏が始まる。
 
  
左)コーチ歴4年の佐藤亮太くん 中)新人コーチ・小澤直人くん 右)スタンドからの応援を練習する1年生たち

ちょっと字が小さくて読み取れないでしょうが、各選手が自らの課題を記したものです。

 
 
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 この日は特守・バント守備・ランニングなど、計4時間半に及ぶ内容であった。