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03年高校野球独善的観戦記 ◇04年版「管理人、高校野球に口を挟む」
03年度野球部特集 ◇04年度野球部特集 ◇05年度野球部特集
05年神奈川大会組合せ表・結果はこちらが詳しいです⇒神奈川高校野球ステーション 

 「野球部特集」WEB版・ペーパー版の作成に追われていると、慌しく時間が経過してゆきます。気がつけば、大会が始まっている、という恐ろしい状況になりました。

 今年も、出来る限りは取材させてもらったチームの応援も兼ねて、球場にも足を運びたいとは思いますが、果たして本当に行けるかどうかは勿論不明です。

 それでも、高校野球を通して、自らの感じることは書いてゆきたいと思います。
(あ、でも、毎日はムリです。最初にお断りしておきますね)

 ご意見・ご批判もお待ちしております。よろしくお付き合い下さいませ。
 
■メールの宛先 toukou@bukatsu.net
 
2005.7.10 管理人・河本啓伸
 

◆◆◆桐光学園大逆転 2005.8.8up◆◆◆
 
副題:甲子園最大のヒール明徳義塾のいない夏
 
 ご無沙汰しておりました。空白期間は吹奏楽のコンクールや本業に精を出しておりました。

 で、気づくともう甲子園本番だったりする。今日(7日)は我が神奈川代表・桐光学園が第三試合に登場し、滋賀の近江高校との対戦があった。

 正直に言うとだね、実はもうその勝敗の行方とかには大した興味はなかったんだが、「責任上」観ておこうかな、と。で、背番号を1から10に挿げ替えられ、きっとそれだけでもプライドをいたく傷つけられたはずの山室投手がどんなピッチングをするか、見つめていたわけだよ。

 ツーアウトまで簡単に取るもんだから、「なんだ、なかなかやるじゃないかね」と思っていたら、3番バッターに四球を与えてから、すっかりおかしくなってしまった。
(私の見た目が間違っていなければ、試合開始当初、球審のストライクゾーンは相当厳しいものであった。これは山室くんには気の毒だと思っていた)

 それにしても4連続四球とはね...。おまけにタイムリーヒットをレフトが後逸するし。
(勿論、彼とてわざとやったわけではない。二塁走者のホームインを防ごうとするあまりのエラーだった)

 初回5点取られて、「こりゃ終わったかな?」と思っていたのであるが、近江高校のピッチャー(西田投手)を見て、「ありゃ、5点くらいなら取れるんじゃないの?この投手が滋賀県大会の決勝で完封したの?」と考え直したのであった。

 西田くんには申し訳ないが、桐光が神奈川県大会で打ってきた投手はレベルが何枚か上であったかと思われた。

 案の定、桐光は中盤、ついに逆転。最後は粘られたが、9−8で何とか逃げ切った。最大の殊勲者は、2回無死一塁でリリーフに出たニ番手投手の石渡くんであろう。甲子園でエースナンバーをつけるだけのことはある、というピッチングであった。

 できれば、2回戦、再度山室くんに投げるチャンスがあれば、と願う。彼はプロからの注目を受けるほどの投手なのであるが、神奈川大会から万全の調子ではなく、彼らしい投球が出来ないまま甲子園を迎えた。今日は勝ったからいいものの、負けていたら、彼の苦悩はいかほどのものであったか想像すら出来ない。

 さて、それよりも、私が何に最も関心を抱いていたか、と言えば、ヒール・明徳義塾が今年はどこまでやるか、ということであった。

 だいたいだね、いくら出場校が少ない(31校)とはいえ、8年連続で優勝して甲子園に出てくるというのは尋常ではない所業である。高知は全国優勝・準優勝を経験したチームもかなりある激戦区なのだ。しかも、それが実力通りの結果が出にくい野球であるから驚きである。

 部員を他県から引っ張ろうが、朝青龍をモンゴルから連れてこようが、それはそれで私学の在り方を示していると、時々感服に至る。
(似たようなことは青森山田高校にも感じる)

 しかし、やってくれました。さすが、ヒール、というとクレームが来そうだけど。

 開会式の2日前になって出場辞退、というのは前代未聞だ。

 部員の喫煙や暴力行為が原因で、それを馬渕史郎監督が高野連に黙っていたことが発覚してのことであるが、私には監督の気持ちがわからなくもない。

 彼は高校野球の監督が職業であるし、野球が弱いというならともかく、ずっと結果を出し続けている人だからね。不憫な気持ちにもなるよ。何せ、あのゴジラ松井に対して5打席連続敬遠という破天荒な戦術を用いた(あくまで、結果として、ということなんだけど)男であり、私はある意味、毎夏、明徳義塾がどこにどうやって負けるのか、というのをとても楽しみにしているという、たちの悪い大人である。

 しかし、それは、裏を返せば、私が馬渕監督の生き様をかなり買っている、ということでもある。

 彼は、この一件で監督を退くことになってしまった。9月に予定されているアジアAAA選手権の日本選抜チームの監督をやることになっていたが、それはどうなるんだろう?
(ま、ダメだわな)

 誤解しないでもらいたいが、私は明徳の選手たちは可哀相だとも思っているし、代わりに出ることになった高知高校の選手諸君の戸惑いも十分理解はしているつもりではある。

 それでも、明徳のいない夏、というのにちょっとした物足りなさを感じる、というわけだ。

 明徳の甲子園メンバー諸君。この件の悔しさをどこにぶつければよいのか、わかるまいね。振り上げた拳の下ろし場所をそれぞれ必死に探してくれることを願ってやまない。自暴自棄にはならないで欲しい。

 そして、馬渕監督。いつか、明徳でなくてもいいから、また「なりふり構わぬ闘い」を見せて欲しい。

 でも、ちょっとは反省しようね。

◆◆◆ベスト4は全て第1シード。恐るべき予定調和 2005.7.26up◆◆◆
 
副題:負けるな、山田沙知子[世界水泳を観て]
 
 こういうこともあるものだ。夏の高校野球神奈川予選、ベスト4に勝ち残ったのは日大・東海大相模・慶應・桐光学園の4チームで、これは春の県大会結果によって配置された第1シードのチームである。

 勿論、春の大会でベスト4に入ったわけだから、力はあるに違いないが、それがそのまま夏もベスト4というのは、あまりに出来すぎた予定調和だとも言える。

 野球というのは、多少力の差があっても、結果がその通りに出にくい競技である。現に、第2・第3シード校の中には初戦敗退というチームもあった。しかも、神奈川は全国一の参加校を誇り、勝ち抜けるには屈指の難関地区である。その中で、春の4強がそのまま夏でも4強というのは、ある意味で奇跡的な現象ですらあるのだ。

 正直に言うと、最早茅ヶ崎勢が姿を消してしまったので、どこが代表になるのか、ということに対して大きな興味は湧かない。ただ、準々決勝をテレビで観させてもらって、どれも素晴らしい試合だったこともあり、どこが出ても、神奈川代表として恥ずかしくはないと確信はしている。

 一応、茅高に競り勝った慶應を髪の毛一本分くらい、ひいきにしようかと。
(ちなみに私は早稲田に行ってましたが)

 既に私の視線は「世界水泳」へと浮気を始めている。
(8月には「世界陸上」に乗り移る予定)

 自己ベストを出した選手には称賛を惜しまないし、メダルを取った選手も素晴らしい。が、私はどうしても女子自由形長距離の山田沙知子選手が気になってしかたない。
(恋してる、という意味では勿論ない)

 彼女は、アテネ五輪、さらには前回の世界水泳で、ランク上はメダル確実という位置にいながら、メダル争いに絡めないばかりか、種目によっては予選敗退という憂き目に遭っている。

 アテネ五輪後、引退するつもりだったのを、意を決して、練習拠点をアメリカに移し、捲土重来を図ることにしたのだが、今回のモントリオール世界水泳でも、既に400M自由形・1500M自由形で予選落ちしてしまった。

 「精神的に弱い」というひと言で片付けるのは易しいが、まさかそれだけではあるまい。

 彼女が残された800Mで決勝に残れたなら、私はたぶん大喜びする。ただ、400M・1500Mを観る限り、相当難しいようにも思える。

 彼女に感情移入している人がいたら、是非ご一報下さい。


 おっ、そういえば26日には準決勝、27日にはいよいよ決勝だ。でも、台風来るらしいぞ。何とかいいグラウンドコンディションでやらせてあげたいもんだね。

◆◆◆茅高大健闘。慶應に惜しくもサヨナラ負け 2005.7.24up◆◆◆
 
副題:本当は君らがここまでやってくれるとは思ってなかったんだ
 
■7/23(土)茅ヶ崎勢の試合結果

 [5回戦]茅ヶ崎2−3慶應 ※サヨナラゲーム
 

素晴らしいシーンをありがとう
 
 5回戦、茅ヶ崎勢最後の砦となった茅高の頑張りは、観る者の胸を熱くせずにはおかなかった。

 相手は選抜ベスト8、春の県大会・関東大会いずれも準優勝の慶應である。その相手に対して、臆するところなく全力で戦った。それどころか、あと一歩、という土俵際まで追い詰めたのである。

 思い起こせば、昨夏、4回戦で第1シードだった厚木西との立ち上がり、過剰な意識から崩れていったエース・佐野くん。綻びを見せてしまった守備。

 結果的に1点も取れずにコールド負けを喫したあの日から、秋山監督と3年生を中心にした選手たちは、この日の戦いを夢想し、待ち望んでいたと言えるだろう。

 接戦の中でも溌剌とプレーし、8回には難敵・横浜を破って意気上がる慶應のエース・中林くんを引きずり出しただけでなく、秋山監督も期待していた黒崎くんが同点打を放って、試合を振り出しに戻す健闘を見せてくれた。

 佐野くんも持てる力は十分に発揮し、バックもそれに応えた。ひじょうに締まった好ゲームで、2時間7分という試合時間も、それを裏付けている。

 最後は惜しくもサヨナラ負けとなったが、茅高らしさを存分に見せた試合であり、今大会のベストゲームの一つとして語り継がれるものだった。野球部の歴史に新たな1ページを加える、特筆すべき試合として、記憶にも残るに違いない。

 茅高の敗戦により、ついに茅ヶ崎勢は全校姿を消すことになった。しかし、この夏の茅ヶ崎勢5チームの健闘ぶりに、私は勇気をもらった。各校に賛辞を贈りたいと思う。

◇寒川高校へ
 昨秋の出場辞退から、2度校歌を聞く(歌う)までに成長した逞しさに胸を打たれました。男泣きの村岡監督の姿も忘れられません。この活躍で、来年以降も部員がたくさん入って来ることを願います。

◇西浜高校へ
 初戦敗退が続いた3年間も見てきました。それだけに、目標として掲げていた3回戦(光明相模原戦)へと勝ち上がったのは見事。エース・水野くんには、その「強気」のピッチングをこれからの野球人生でも続けてもらいたいと思います。

◇北陵高校へ
 日大への挑戦権を取らせてあげたかった。延長戦の緊迫の中、ミスを犯すこともなく、堂々と戦ったことは素晴らしかったと思います。現1・2年生中心の投手陣を軸に、この新人戦から巻き返しを図って下さい。

◇鶴嶺高校へ
 川崎北に競り勝ったこと、平塚学園と接戦を演じたこと。その結果は勿論ですが、突出した選手のいない中でも、きちんとチームを仕上げてくる精神性にこそ、鶴嶺の伝統を感じました。

◇茅ヶ崎高校へ
 大きな期待を集めた中で、その実力を発揮できたことは素晴らしい経験となるでしょう。秋山監督が「このチームで負けたらしかたない」と仰るだけのことはありました。1・2年生諸君は先輩たちの残したものをうまく取り入れて、それを凌駕出来るよう、頑張って下さい。


 野球はボールが動いていない時間が長いスポーツである。行間の意を汲むスポーツだとも言えよう。そこに様々な想いが去来し、選手やチームへの感情移入も行われる。

 特に高校野球では、自分のクラスメートが教室とは全く別人のような活躍を見せたり、近所のお兄ちゃんが実はスゴイ選手だったりと、学校・地域の一体感を醸し出す大きな要素にもなる。私も選手やマネージャーに何人か教え子がいて、彼らから学ぶことも多々あった。

 3年生諸君は、この夏を以って引退となるが、野球を続けられる資質と環境を持っている人は、是非、一段高いレベルでやり続けてもらいたい。そうでない人も、この夏感じたことを忘れず、これからの人生に活かして欲しい。

 私も君たちからもらった勇気やエネルギーを大切にさせてもらうよ。お疲れ様でした。

※注:別に最終回ではありません。念の為。

◆◆◆茅高4回戦突破!いよいよ優勝候補・慶應と対決 2005.7.22up◆◆◆
 
副題:初のベスト16おめでとう。慶應戦でもベストパフォーマンスを
 
■7/21(木)茅ヶ崎勢の試合結果

 [4回戦]茅ヶ崎4−1百合丘
  5回戦:23日11:00〜保土ヶ谷球場 相手:慶應
 

相手は春の選抜ベスト8&関東大会準優勝。失くすものは何もない
 
 ついに手繰り寄せた挑戦権である。

 今年の茅高は、昨夏(4回戦進出)からのレギュラーも多く残り、プロからの注目を集める佐野くんというエースもいて、茅ヶ崎高校史上最大の期待を集めるチームであり、同時に近隣の公立校では頭ひとつ抜けた存在でもある。

 しかし、夏の高校野球というのは、トーナメントであり、「力があるから勝てる」というものではない。どの学校も3年生にとっては集大成を懸けて臨む大会であり、蟻が象を倒す、という現象も珍しくないのだ。実際、茅高と4回戦で相まみえると思われていたY校は初戦で敗退した。

 それだけに、「負けない野球」を標榜し、エースを中心に接戦をものにしてきたことは、選手たちも自信になったことであろうし、秋山監督もここまでの運びは、してやったり、というところではなかろうか。

 5回戦。いよいよ迎える相手は、今春選抜でベスト8で、春の関東大会準優勝と、実績十分な第1シード・慶應高校である。彼らとて、同じ高校生であり、ましてや今日の4回戦で最大の難敵と思われた昨夏代表の横浜高校との激戦を2−1で制し、もしかしたら、ちょっとした心の隙が出来ているかもしれない(希望込み)。

 大会前の取材で、茅高のエース・佐野くんは「Y校は勿論、慶應に勝つつもりで練習してきました」とキッパリ語ってもいた。その意気やよし。

 目標でもあった部史上最高のベスト16も手中にし、是非、リラックスして臨んでもらいたい。テレビ中継もあるしね。

 「部活.ネット」には、昨年の責任マネージャーだった佐々木千恵さんから「技術的にも精神的にも、去年より逞しくなった。佐野くんからはオーラが出てました」というメールを頂いた。

 期待される中で頑張る

 そういう経験を積めることだけでも素晴らしい。「無欲」ではなく、「勝つ」という気持ちで晴れ舞台に立って欲しい。わくわくするような気持ちで23日を迎えて欲しい。

 大会が始まって10日余り。既に、昨夏代表の横浜をはじめ、強豪と言われていた高校も多くが散っていった。それでも、戦う権利を残した16校が凌ぎを削る。甲子園まで、あと4つも勝たねばならないのである。

 当サイトでは、勿論、茅高に圧倒的な肩入れをしつつ、これからの戦いを見つめたいと思う。
 

◆◆◆鶴嶺、第2シード平学に善戦するも... 2005.7.20up◆◆◆
 
副題:茅高よ、あとは頼んだ
 
■7/19(火)茅ヶ崎勢の試合結果

 [3回戦]鶴嶺0−2平塚学園
 [3回戦]茅ヶ崎5−3厚木
  4回戦:21日14:30〜大和引地台球場 相手:百合丘

茅高は昨年に続き4回戦進出
 
 鶴嶺は目標としてきた平塚学園戦であった。直接観戦したわけではないので、多くを語るべきではないとは思うが、スコアや観戦者からの報告によれば、それこそ私がずっと難しいと言い続けている「自分の力を発揮した」のではなかろうか。

 今年は法政二・鎌倉学園・Y校と、伝統あるシード校が次々に敗退するという巡り合せもあって、私は密かに鶴嶺が平塚学園を倒すのでは、と期待していた。

 周りで見ているだけの者の、無責任な発言だとわかってはいるのだが、毎年コンスタントにチームを仕上げてくる鶴嶺だけに、目標としていたこの試合に、並々ならぬ意欲で向かってゆくことだけは確信していた。

 結果は、既にTVKや新聞等でご存知であろうが、2回に出たホームランによる失点を追いつけなかったものの、その後、強豪を零封する健闘ぶりであった。

 鶴嶺は今年、長らく指導されてきた菊地原先生が深沢高校に転任され、小松先生が監督に就任された。指導者が交代する時にはいろいろな難しさも生じるが、挨拶の溌剌さやグラウンドを大切にする気持ちといったものは、きちんと引き継がれており、基本に徹するところは清々しさを覚える。

 で、私はどうしてもこの試合を観て欲しい人がいた。事情もあって、その名前を明かすことは出来ないのだが、もし機会があれば、訊いてみたいと思う。観てくれたのであれば、もうそれだけでいいのだが...。
(おっ、何か意味シンですかね?自分が該当すると思う人はメールでも下さい)

 茅ヶ崎勢が全チーム3回戦に勝ち進んだことを喜んでいたのが嘘のように、4チームが次々に消えてゆく中、踏ん張ったのが茅高である。

 初戦となった湘南学院戦で見事な完封を演じた佐野くんを擁し、3回戦も厚木に粘り勝ち。チームの目指す「負けない野球」(秋山監督・談)を実演して見せた。

 さて、4回戦は想定していたY校ではなく、百合丘となったが、勿論油断できない。彼らも2勝を挙げ、5回戦(慶應・横浜の勝者)での対決をまずは目指して張り切っているはずだ。

 茅高はこの4回戦に勝てば、部史上最高タイの5回戦進出であり、彼らにしてみれば、もうそれは腕を伸ばせば届くところにある。甲子園常連チームとどこまで戦えるのか、是非見たいものである。
(またしても部外者のお気楽発言と取られそうだが、本音だし)

 「ここまでくれば気力の勝負だ」

 と秋山監督が言うとは、あまり想像できない。技術を大切にし、それも同じ技術なら体格がいい方がよい、と常々仰っている監督だけに

 「たっぷり食べて、たっぷり休みなさい」

 とでも言っているのだろうか...。

 でも、精神力は技術を発揮するためには不可欠だということを熟知している監督の采配にも期待してますね。

スパイは実在する!
 
 すんません。タイトル大袈裟すぎました。

 しかし、多くの部員を抱え、甲子園を目指している学校は次の試合のみならず、その次、さらにそのまた次の試合で当たると考えられるチームが、どういった戦力を持ち、どういう戦術を得意とするか、といったことを偵察する部隊を各球場に派遣している。

 写真は春の県大会を制した日大高校の2年生部員。平塚球場に北陵−愛川の3回戦を観に来て、投手は勿論、全打者のデータを取っている。
 
 甲子園というのは、彼らにしてみれば「夢」ではなく、「負けなければ出られる」目標であり、それに一歩でも近づくためには努力を惜しまない、ということであろう。

 ちなみに、「北陵と愛川、どっちの方が戦いやすい?」と尋ねたら、一瞬だけ逡巡して

 「どちらが出てきても大丈夫だと思います」

 とキッパリ。

 そ...そうか......。
 

◆◆◆敗北。それを受け容れる日は突然やって来る 2005.7.19up◆◆◆
 
副題:炎の“解説オヤジ”に捧げる
 
雲ひとつない、という形容がピタリとくる炎天下、試合は始まった
 
■7/18(月)茅ヶ崎勢の試合結果

 [3回戦]西浜2−11光明相模原
 [3回戦]寒川2−9横浜緑ヶ丘
 [3回戦]北陵4−5愛川 ※延長10回

梅雨明けの酷暑。あまりの暑さに、ついにカメラがイカれる
 
 7月18日(月)。今日は海の日であり、関東地方の梅雨明け宣言が為された。ひどく暑く、基本的には夜間生活者であり、夏が好きじゃない私にとって、通常なら絶対に外出することのない時間帯に、北陵高校の3回戦は組まれていた。

 平塚球場での北陵−愛川戦は午後1時半開始予定であったが、第一試合に春の覇者・日大が出場するため、大差のコールドもあるかと、早めに出発することにした。外に出た瞬間に「これは熱中症日和だ」と感じ、持ち歩くには重いが、致し方なく1リットル入りのスポーツドリンクを購入し、取材用バッグ(実はただのシューズを入れる袋)に詰め込んだ。

 午前中は保土ヶ谷球場で行われている西浜−光明相模原戦をテレビで観ていた。西浜が初回に相手投手の乱れから2点を先制。それをエース・水野くんが自らの素晴らしいフィールディングも含めた守備で守りきる、という展開であり、3回終了時点までを見届け、出掛けることにした。
(その時点では2−0で西浜がリード)

 球場に到着すると、案の定、日大が5回コールドで勝ちを収めていた。予定よりも早く到着した自分に、ちょっと酔いしれ、心の中で小さくガッツポーズなどを作ったりする。

 駐車場から野球場までの距離が遠いのが、平塚球場の難点である。歩いているだけで滝のような汗が流れ落ちてゆく。これで野球をやる選手たちは大丈夫なのかと、ちょっと心配になった。
(でも、自分のことの方が圧倒的に心配だったよ)

 スタンドに辿り着き、椅子に座った途端、あまりの熱さに飛び上がった。短パンで来ていたら、熱くて座れないぜ。で、私は願った。

 「北陵よ。頼むから1・2回戦同様、コールドで早く終わらせてくれ」と。

 何しろ、うちのスタッフが先月、新婚旅行に行った際の土産としてくれたニューヨーク・ヤンキースのTシャツが、試合も始まってないのに、既にビショ濡れ状態だ。そのシャツから出た腕は、ジリジリと音を立てているかのようで(陳腐な表現で申し訳ない)、「あぁ、俺は今、日焼けしてるぜ」と、実感できるほどのクソ暑さなのである。

 で、こういう時のために持ってきたスポーツドリンクをやおら取り出して口に含むと、これが既にぬるい。人間は、たったこれだけのことで悲しくなったりするものだなぁ、と、しばし厭世観に浸る。


  
左)試合前と5回終了時に放水。ちょっと涼しくなった 中)まだ3回戦ではあるが、観客は結構いる 右)試合開始
  
左)ややサイドから力のある球を投げる、北陵の先発・麦島投手 中)延長10回完投勝利の愛川・河原投手 右)北陵横断幕
  
愛川高校応援席はやや寂しいものがあった。チアは3人(たぶん)。そこに友達(たぶん)が特別参加の計4人。
  
  
応援人数では北陵の圧勝。息もよく揃っていた。
  
子供はネットに張り付く習性があるということを発見した
 

 試合は私の予想とは著しく異なった展開となった。

 どのくらい異なっていたか、というと、コールドで北陵が勝つ(願望込み)というのが予想で、一進一退の攻防から延長戦にもつれ込む、というのが実際のゲームであった。つまり、私はクソ暑い中を、予定より長い時間滞在することとなったのだが、試合そのものの面白さから、どうにか途中で倒れずに済んだ。

 試合の主導権をどちらが握っているのか、よくわからない進行であった。愛川が取っては北陵が取り返す、というもので、その緊迫感から、私のそばで北陵を応援していたガキが北陵のピンチの際に泣き出すほどであった。

 しかし、8回ウラ、一死一・三塁から北陵が麦島くんのショートゴロの間に1点勝ち越したことで、ようやくケリがつくものかと思われた。実際、私は9回表の愛川の攻撃が始まる時には、ゲームセットの瞬間や校歌を歌う北陵ナインの撮影チャンスを逃さないように、北陵応援席の方からバックネット裏へと移動した。

 ところが、試合はここから再度動き出す。

 先発してここまで投げてきた麦島くんは、勝ちを意識して硬くなったわけではあるまいが、3本の長短打を集められ、逆転を許すことになってしまったのだ。さらに、3アウト目のセンターライナーをキャッチしたキャプテン・小澤くんが負傷。ウラの攻撃で打順が回ってくるところだが、代打を送らざるを得ない、という一転ピンチ。

 9回ウラ、先頭の渡辺くん(1番打者)がしぶとく内野安打で出塁すると、本来小澤くんの打順で、取っておきの代打・内田くんが登場。送りバントをするには惜しいと思える打力もある背番号1は、それでもきちんとバントを決めた。

 ここで、3番草野くんが一塁線に強烈なタイムリーヒットを放ち、北陵は三たび追いつくのであった。
 
9回ウラ。草野くんのタイムリーで生還する渡辺くん。試合は延長に突入した
 
 このあと、5回にランニングホームランを打っている4番・石黒くんに対して、愛川は敬遠策。一死一・二塁と塁を埋めた。5番小林くんのショートゴロの間に、ランナーはそれぞれ進塁。バッテリーエラーでもサヨナラという場面、愛川はよく踏ん張り、続く6番の村本くんをファーストゴロに仕留めた。

 いよいよ、私が最も望んでいない延長戦に入った。

 10回表、先頭の伊従くんが絶妙のプッシュバントで出塁すると、送りバント。ニ死後、左の木附沢くんに対して、北陵は1年生左腕の永島くんを投入。
 
 しかし、これが結果的に裏目に。フラフラと上がった打球がショートとレフトの間に落ちる間に、二塁ランナーが還った。

 そのウラの攻撃で、代打の山口くんが暴走気味(失礼!)の二塁打を放ったが、生還できず、ついに北陵が敗れる日が来てしまった。

 しかも、この試合の途中で、西浜が逆転負けを喫し、さらには寒川も緑ヶ丘に敗れ去ったことがアナウンスされた。

 昨日まで破竹の9連勝と勢いに乗っていた茅ヶ崎地区のチームが一気に3チーム姿を消すことになってしまったのであった。
 
  
左)10回二死から登板の1年生投手・永島くん 中)愛川、歓喜の逆転ホームイン 右)最終打者となった渡辺くん。ヘッドスライディングも及ばず
  
涙・涙・涙...
 
 勝負事には勝ち負けは付き物であり、神奈川代表になれるのは1チームだけ。いずれ、負けを受け容れなければならない日は来るのであろうが、わかっていても受け容れ難いものでもある。

 せめて、北陵には昨年果たせなかった「打倒!強豪私学」(昨年は横浜商大と対戦)へのチケットを掴んで欲しかった。選手だけでなく、松島監督や北陵野球部を支えてきた人たちに、春の県大会覇者・日大と戦うチャンスをあげたかった。

 眠れぬ夜を過ごしたろうか...。

 しかし、俯いて欲しくはない。同じことは、昨夏からのエースが全3試合を一人で投げぬいた西浜・寒川にも言いたい。

 「あの時、ああしていれば...」と思うこともあろう。しかし、「れば・たら」はない。相手も必死で、こちらの力を発揮させまいとして、ありとあらゆることを仕掛けてくるわけだし、そこで持てる力を全て発揮するというのも、相当に困難である。

 もう、ついさっきまで存在したチームで、真剣勝負の野球をやれる日は永遠に来ない。それどころか、この日を境に、生涯硬球を握らない、という選手も多数いるはずだ。

 だからこそ、高校時代の輝きは美しい。懸命にやった上で負けた、という経験があることは素晴らしい。

 特に3年生諸君には、「あの場所では頑張れた」という想いを胸に、堂々とステージを降りてくれることを切望する。

スタジアムで見つけた『炎の解説オヤジ』
 
  
 背中に「名球界 in Hiratsuka」という文字入りのTシャツを着た、この人は凄かった。

 何が凄いって、とにかくのべつ喋り続けるのであった。炎天下の野球解説である。しかも、それが誰に語り掛けているのかよくわからない。

 しかし、よく通る声で、ちゃんと状況を把握し、高校野球のセオリーを構築していることを覗わせる知的センスもふんだんに盛り込んである。

 もしや名のある人なのかもしれない。
(たぶん、違うと思うけど)

 ウーロン茶の2リットルペットボトル(中身はウーロンハイだったかもしれませんなぁ)を小脇に置いて、枝豆を食っている。

 曰く「俺は日陰なんか行かねえよ。選手たちと一緒に日を浴びて戦ってんだ。青春してんだよぉ。」
 曰く「おいおい、ここはセンター返しだろうよぉ。」
 曰く「何で満塁策じゃねえんだ?ここは満塁策だろうよぉ。」
 曰く「いやいや、この子は頭いいよぉ。なるっべく、ピッチャーに球数放らせようとしてるよぉ。」
 曰く「あの名匠、池田高校の蔦監督でさえもが、バントは重要な戦術だと心得ていらっしゃったんだよぉ。」

 書き出せばキリがない。

 なぜか、北陵応援席の近くに座っていたが、愛川の選手も誉めるし、北陵の選手も切る。

 う〜ん。一体誰なんだろうか...。万一、このサイトをご覧でしたら、ご一報下さい。
(たぶん見てないし、連絡もないと思うけど)

 まあ、また球場で会いましょう。

 ちなみに、このおっさんは、最後のエール交換までちゃんとスタンドに残り、一人で愛川応援団からのエールを受け返すという律儀さも兼ね備えていた。

 その写真(右)を撮った直後、既に暑さにもやられていた私のカメラは、ついに撮影不能に陥った。北陵の解団式の写真がないのは、このおっさんの仕業だとも言えるのであった。

 チャンチャン♪

管理人追伸
 
 日頃、めったに日光に当たらない、ドラキュラのような生活をしているので、18日の暑さは相当堪えました。

 肌はすっかり変色し、勿論、頭痛もしています。誰か助けて下さい。

 さて、本日(19日)は茅高と鶴嶺に茅ヶ崎勢の意地を見せて勝ち残ってもらいたいと願ってます。特に、鶴嶺は待ち望んでいた第2シードの平塚学園との対戦。楽しみにしていますね。
 

◆◆◆茅高も初戦完封発進 茅ヶ崎勢ついに9連勝 2005.7.18up◆◆◆
 
副題:全チーム3回戦進出は史上初の快挙(たぶん)
 
■7/17(日)茅ヶ崎勢の試合結果

 [2回戦]茅ヶ崎3−0湘南学院
  3回戦:19日14:30〜 横浜球場 相手:厚木
 [2回戦]鶴嶺4−2川崎北
  3回戦:19日12:00〜 相模原球場 相手:平塚学園

 驚くな、というのが無理だ。

 茅ヶ崎地区の5チームが揃って3回戦に進出する、という快挙を誰が予想できたろうか。

 だいたいですなぁ、一昨年などは3回戦に進んだのは鶴嶺だけで、その鶴嶺も3回戦で好投手・吉田くん(ヤクルトにドラフトされて入団するも、病気のため既に退団)を擁する城郷に敗れてしまい、夏休みの訪れが早かったものだよ。

 それが、取材させてもらった全チームが皆勝ち進んで、管理人冥利に尽きるというものですぜ。

 さて、17日は茅高が満を持して(というか、組合せの問題なんだけど)登場。

 茅高はいきなりの山場と思われた初戦(2回戦)の湘南学院戦を4回に挙げた3点を守り切り、完封。エース・佐野くんのデキが勝負を左右すると見ていたが、まさにその通りの展開に持ち込み、「してやったり」の勝利ではなかろうか。

 秋山監督も、きっとホッとされていることでしょう。これで少し肩の力を抜き、引き続き茅高らしい「負けない野球」を見せてもらいたい。

 昨年に続き、メールをくれている木村美夕紀マネージャー(学校訪問の時には風邪でお休みで会えなくて残念でした)も今年は責任マネとしてベンチ入りしているので、きっと喜んでいるだろうね。よかったね。またメール下さいね。

 鶴嶺もしぶとい。

 2回戦の相手は、春の県大会で茅高に競り勝っている川崎北であったが、初回の3点を必死に守っての勝利であった。まさに「ワンチャンスを掴む」という今年のチームに相応しい勝ち方だと言える。
(実は、この試合を応援しに行く予定だったのだが、倒れてました。すんません。鶴嶺が負けなくて本当によかった...。)


 さて、18日からは3回戦が始まる。茅ヶ崎の5チームがどこまで勝ち続けられるのか、ということにも興味は湧くが、これから当たる相手はどこも勝ち上がってきたチームであり、弱いところはないと言えよう。そういうチームと戦う際に、練習で積み重ねたものが現れる。つまり、練習の成果を見せる、ということさえ叶わずに去ってゆくチームが大半なのだ。

 茅ヶ崎勢だけでなく、勝ち残ったチームの諸君は、力を出すことなく敗れ去った者たちの分も背負って戦うことになる。試合は勝者と敗者を作り出すことになるが、2005年の夏を振り返った時に「あの時俺は必死だった」と思えるようなプレーをしてもらいたいし、試合に出場することが出来ない選手も、精一杯のサポートで「参加する」という意識は失わずにいてもらいたいと願う。

 18日は北陵の3回戦を観に行く予定ではあるよ。でも、また倒れるかもしらんので、「絶対に」とは言わないでおきます。スタンドで会った人は、私に冷たくしないで下さいね。

◆◆◆茅ヶ崎勢、いまだ負けず 2005.7.15up◆◆◆
 
副題:茅高よ、君らにも勝利の追い風が吹いている!
 
■7/13(水)・14(木)茅ヶ崎勢の試合結果
 [1回戦]鶴嶺11−1相武台 ※5回コールド
  2回戦:17日13:30〜平塚球場 相手:川崎北
 [2回戦]北陵8−1平塚農 ※7回コールド
  3回戦:18日13:30〜平塚球場 相手:愛川
 [2回戦]寒川5−3大磯
  3回戦:18日13:30〜保土ヶ谷球場 相手:横浜緑ヶ丘 テレビ中継あり
 [2回戦]西浜8−1湯河原 ※7回コールド
  3回戦:18日11:00〜保土ヶ谷球場 相手:光明相模原 テレビ中継あり
 
 ※茅ヶ崎高校の初戦(2回戦)は17日11:00〜等々力球場にて対湘南学院
 

 13日に行われた鶴嶺の1回戦(対相武台高校)は11−1で完勝。また、14日、既に2回戦に突入した北陵は、1回戦に続き、7回コールドで平塚農を下した。同じく、初戦を突破して意気上がる寒川は、2回戦の対大磯にもクロスゲームで勝ち、再びテレビ中継のある保土ヶ谷球場で横浜緑ヶ丘と戦うことに。さらに、冷や汗の勝利で初戦を勝ち上がった西浜も、湯河原にコールド勝ち。3回戦の相手は第2シードの光明相模原である。

 こうやって、結果だけを書くのはたやすいが、茅ヶ崎の学校が、まだ一つも負けていないという事実に、失礼ながら驚く次第である。

 だって、7勝0敗だよ。大相撲の幕下以下なら全勝優勝ってことだぜ。そりぁ驚かずにいられまい。

 人間、勝てば「もっと勝ちたい」と思うもので、寒川などは「初戦突破」「勝って校歌を」という第一目標を達したかと思えば、既に「2回勝って、もう一度テレビ中継のある保土ヶ谷球場で試合を」という第二目標も達成。もうあとは勢いに乗じてひたすら野球を楽しんでもらいたい。できれば、「無欲」でなく、欲を持って勝ってくれれば、と願う。

 さて、本日15日は予備日で、試合が組まれていない。気になるのは、まだ登場していない茅ヶ崎高校である。

 大会が始まってから、1週間以上も待っての初戦は17日の湘南学院戦。相手はもともと力がある上、既に一度勝ったという勢いもある。これを止めるには、エース佐野くんの力投が不可欠。初戦にピークを持ってゆくと語っていた彼の投球が楽しみである。

 これで茅高が勝てば、全校初戦突破という、「部活.ネット」取材開始以来初の快挙となる。だから、というわけではないが、是非、茅高にも勝ってもらいたい。初戦をモノにすれば、今度は茅高が勢いに乗って、4回戦で顔が合うと予想されるY校とも勝負も面白くなる。

 それにしてもだね、こんな勝ち上がると、野球を見るだけで精一杯の日々が続いてしまうじゃないかね。一応、仕事もあるんですけど...。

 隠していて申し訳なかったのだが、20日からは本業の学習塾(ICプレップ)の夏期講習が始まったりするわけで、野球三昧の生活とはいかなかったりもするんだよ。

 あぁ、でも何とか17日か18日はナマで観たいものだ。西浜・寒川両校はテレビ観戦で勘弁してね。
 
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▼▲ご投稿頂いている皆さんへ▼▲▼▲
 
 いろいろとメールを頂きありがとうございます。なかなかタイミングよく紹介する機会がなくて申し訳ありません。

 大清水高校Oさん。2回戦、第1シードの桐光学園に粘りを見せましたが、残念でしたね。もしよかったら、またメールを下さいね。

 読者の皆さん、懲りずにまたお便り下さいませ。
 

◆◆◆見せてもらったエースの闘魂 2005.7.11up◆◆◆
 
副題:祝・初戦突破〜寒川高校・西浜高校に捧げる
 
西浜対麻溝台の最終スコア。最後はかなり冷や汗モノであった
 
■7/10(日)茅ヶ崎勢の試合結果
 寒川2−1横須賀大津 ※サヨナラ勝ち
 西浜4−3麻溝台
 北陵7−0新城 ※7回コールド

 茅ヶ崎のチームがみんな勝ったから、7月10日は茅ヶ崎記念日(俵万智風)

寒川、歓喜の校歌斉唱
その時、監督は泣いていた
 
 初手からいきなり熱いっす。

 昨夜、かなり激しい雨が降ったので、試合が出来るのかどうか危ぶまれたのだが、朝になってみると晴れていた。

 私は根性がないので、本日茅ヶ崎地区の3つの学校が登場するのだが、寒川は保土ヶ谷球場でテレビ中継を観る、北陵は等々力球場で遠いため勝つことを信じて行かず、平塚球場で行われる西浜対麻溝台の試合を観に行くことにした。

 で、午前中に行われた寒川対横須賀大津の試合をテレビで観ていて、既に私は感動気味。この5年間、初戦敗退の続いていた寒川が、エース・永山進吾くんの渾身の力投と、必死の粘りで2−1のサヨナラゲームを演じたのだ。

 試合経過の詳細は、新聞などに譲るが、息詰まる投手戦となった試合は8回表(横須賀大津が先攻)を迎えて0−1で寒川の劣勢。しかも一死で走者三塁。ある意味で絶体絶命のピンチである。

 ここで横須賀大津はスクイズに。トーナメントである高校野球では常套手段とも言えるが、緊迫した場面で、ボールをフェアグラウンドに転がすことは相当難しいものであり、転がされたら最後、大概タッチプレーとなる本塁でのアウトは諦めるものだ。

 しかし、この局面で、転がったボールをマウンドから駆け下りた永山くんが素手で掴むやいなや、捕手にバックトス。ランナーは本塁寸前タッチアウト。

 私には、このプレーが今年の寒川を象徴するものに思えてならなかった。

 寒川には、昨秋の大会をけが人が続いたため、出場辞退せざるを得なかった過去がある。戦って負けるならともかく、戦うことすら出来なかったという記憶は、選手たちの中に何らかの形で残っていたろう。それを昨夏からのエースで経験値の高い永山くんを中心に戦うというチーム戦略で、初戦突破に向け、頑張ってきたわけだ。

 勝負の分水嶺とも言うべきスクイズを、課題とされていた守備での綻びを見せず、しかもエースが渾身のプレーによって刺したことは、そのウラの攻撃に大きな弾みをつけるものであった。

 彼らがこの2005年の夏を振り返った時、「あのプレーが」ときっと思い起こすに違いないシーンであった。

 流れというものは、確かに存在する。そのウラ、寒川はそれまで1安打に封じられていたところから、同点とし、さらには9回、永山くんの二塁打のあと、高校に入ってから野球を始めたという鈴木謙吾くんがレフトオーバーに絵に描いたようなサヨナラヒット。

 事前取材で、村岡監督は「勝って校歌を歌いたい」と語っていたが、ついにそれが叶う日が訪れたわけである。しかも、劣勢からの逆転。この勝利は選手・監督にとって大きな自信となろう。村岡監督は巨体で男泣き。よかったですね。

 甲子園で優勝しない限り、どのチームもいずれ負けを受け容れなければならない。しかし、必死に練習してきたことを発揮して、せめて1勝を、と願う気持ちはあるだろう。出場したチームの半数は、一度も勝つことなく解散することになるとは言え、5年間勝利から遠ざかっていた寒川高校。

 6年振りの初戦突破。本当におめでとう。

9回には何かが起こる。西浜、薄氷の初戦突破
 
 さて、寒川高校のサヨナラ勝ちをテレビで観てから平塚球場に出掛けたため、到着した時には既に、西浜対麻溝台の試合が始まっていた。

 西浜の水野崇裕くんは、寒川の永山くん同様、昨夏からのエース。
(しかも、同じ円蔵中学出身だ)

 初戦ということもあって、やや緊張は見られたものの、要所を締め、5回までは麻溝台をノーヒットに押さえ込んでいた。フォアボールはいくつかあったが、まず安心して見ていられる内容であった。
 
  
右は1年生マネージャー4名
  
  
左)力投のエース・水野くん 中)満塁の走者を一掃するタイムリーを放った齋藤勇介主将 右)待望の得点シーン
  
左)麻溝台のエース・秋里くんはなかなかの好投手。ここぞという場面では吠えながら投げる「気合投法」で、とても印象に残る選手であった。 中)円陣を組む西浜 右)バント守備。一塁手の岩切くんは、相手のバントがファールになると見て、ボールをスルーしてグラウンドに仰向けで引っくり返るという技(?)を披露。将来が楽しみな1年生だ。
  
左)8回までゼロに抑えられていた麻溝台。9回のウラ、円陣にも力が入る。 中)祈る麻溝台応援席 右)9回ニ死満塁から走者一掃の二塁打が出て、歓喜に沸き返るの図
 
 
 試合は4回に満塁のチャンスから、代打に出た柴田くんがタイムリーを打って、西浜が先制。さらに、この日1番に入った齋藤主将が外野の頭を越える、走者一掃の二塁打。もつれそうな試合の流れを一気に掴んだ。

 その後、双方たびたびランナーは出るが、ホームには帰れない。あっさり終わると思われたが、やはり9回には何かが起こるものだ。

 窮余の一策とも思えた麻溝台の代打攻勢に、「初戦突破の最終イニング」ということを意識しすぎたのか、水野くんの様子がややおかしい。ニ死からデッドボールを与え、ついに満塁に。

 ここで、ひと呼吸置くため、タイムを取ったが、直後にタイムリー二塁打を浴び、得点差は1に。西浜応援席には不安の表情が、麻溝台応援席では呪縛から解き放たれたようなバンザイが。

 「野球は9回ツーアウトから」

 よく言われるセリフであるが、よく言われるだけあって、勝ちを意識した方が硬くなってしまうものだ。水野くんも肩に力が入っている様子が窺われた。

 マウンド上で、自らの胸をトントンと叩き、気持ちを鎮めるエース。3番打者に対して渾身の投球。

 神は見捨てなかった、と言えば少し陳腐であるが、その打球は試合を終わらせるべき場所へと力なく飛んだ。西浜はようやく勝利を手にしたのであった。
 
  
左)ピンチでマウンドに集まる内野陣 中)ゲームセット 右)西浜、校歌斉唱
 
 
 西浜もこの3年間は初戦の壁を突破出来ずにいた。だから、産みの苦しみだったのかもしれない。この経験を、2回戦・3回戦にさらに活かしてもらいたい。

 おめでとう、西浜高校。
 
卒業アルバム用の撮影にこっそり便乗させてもらいました
  
左)殊勲のタイムリー二塁打を放った齋藤主将。「最後はちょっと焦りましたね」と正直だった 中)完投勝利の水野投手。「やっぱり初戦が大切だと思って、最初から行きました」とのこと。これで緊張が解けて、もっと彼の力が発揮されることだろう 右)山崎篤監督(ユニフォーム姿)と堀達也部長。「最後は胃が痛くなりました」とは、堀部長のコメント

  
左)試合終了後、「想い」を託して折鶴を渡す麻溝台の秋里主将(君、キャプテンだったのか....!) 中・右)今年もいました。平塚球場の柵越しに「ただ見」するおじさんたち。一応「学校関係者の方ですか?」と尋ねてみたが、勿論答えは「いいえ」

北陵高校野球部の皆さんへ
 
 試合に行けず、申し訳ありませんでした。勝つと信じていました。

 2回戦も仕事の都合で行けそうもりません。勝って下さい。3回戦には行けるかもしれません。

 7−0のコールド勝ちは立派です。この調子で勝ち進んで、是非、日大高校と戦って下さいね。
(おぉっ、言葉に責任というものがほとんど感じられない...。ゴメンナサイ!)

 というわけで、7月10日は、出場した茅ヶ崎地区の3チームが全て勝つという快挙で、めでたしめでたし、と。