TOPページに戻る
顧問:長谷川正紀先生

新たな発見がいくつも....
 
 ソフトボールと言えば、私(管理人)の初恋の女性が、中学のソフト部でキャプテンをしていて、その子の追っかけで何度か試合は見たことがあったのだが(冷静に考えてみると、ちょっとストーカーなのか?)、勿論、その時はひさしだけの帽子(何て名称なんだ?)を被った彼女が可愛くて、それ以外のことはほとんど覚えていない....。
 
 でも、取材の前日には、集英社から発行されている「スポルティーバ」という雑誌で、宇津木妙子全日本監督と宇津木麗華選手のノンフィクション(これは緻密に取材した形跡が伺われて、優れた作品になっている)を読んで、それなりに、ソフトボールに対する認識を高めていたわけだが、現実のソフトボールを見てみると、新たな発見がたくさんあったりする。

 このことについては、あとで読者の皆さんにもお伝えしようと思うので、読んでみてね。

明るく、楽しく、茅高らしく
 
 この日は、春の関東大会神奈川県予選の初戦であった。この意味するところは『地区予選を勝ち残りました』ということにほかならない。

 現在の3年生たちが入学してきた頃は、同好会として存在していたわけだが、県大会までの壁を突破することは叶わなかった。それをこの2年間できちんと試合ができるように懸命の活動をしたことが認められて、今年初め、ついに「部への昇格」を勝ち取った。

 こういう例はごく僅かであり、他の同好会にも勇気を与えるものとして喜ばしい。

 では、同好会と部では一体何が違うのであろうか?

 その辺を顧問の長谷川正紀先生にお伺いした。

 「いや、活動そのものは“楽しく”ということを基本にしていますから、ほとんど変わらないですが、同好会だと予算が少なくて、用具を買い揃えてゆくのが大変だということですね。試合球は1つ800円くらいしますが、それを1試合ごとに1つは出すことになりますから、結構お金も掛かります。あと、部になったことで、生徒たちにアピールしやすくなった、というところでしょうか。」

 とのことだった。

 確かにボール、ヘルメット、バット、レガース、プロテクターといった道具は必須であり、尚且つ消耗品なので、ある程度学校からの予算がないと、運営は苦しいものとなろう。

 事実、この日会場となった平塚商業高校に登場したチームの中でユニフォームがないのは茅ヶ崎高校だけであった。

 さて、試合の方(対戦相手は海老名高校)であるが、2年生の正捕手が前日の練習でけがをしてしまい、急遽1年生の二瓶由佳さんがマスクをかぶることに。

 彼女は中学時代も捕手経験はあるが、何せまだ高校に入ったばかりで、いきなりの大舞台。少し気の毒であった。緊張は伝播もしたようで、茅高は初回に5点取られてしまった。

 しかし、ベンチからも大きな声が出るようになり、エース・林陽子さん(3年)のピッチング、野手陣の守りも軽快になって、試合は引き締まった。

 印象的だったのは、林さんが笑顔で投げていたことだ。

 勿論、1年生捕手をかばうという意味もあったのかもしれないが、あの笑顔はチームに勇気と安心感を与えた。まさに“明るく、楽しく”をモットーとする茅ヶ崎高校ソフトボール部を象徴する、特筆すべきことではなかったかと思う。

 残念ながら、7−0で敗れはしたが、明日への課題も見つかり、有意義な試合だったのではなかろうか。

  
(左)エース・林投手の「スマイル投法」 (中)指名打者(DH)に抜擢された1年生の山岡さん (右)内野はベースより手前でガッチリ腰を落として守る

ソフトボールにはこんなルールがある!
 
 ソフトボールには野球とは異なるルールがあり、それがゲームを面白くさせる要因だと言えよう。

(1)バッテリー間・塁間の距離
 バッテリー間は野球の18.44mに対して、13.11m(男子は14.02m)。塁間は野球の27.43mに対して、18.29m。だいたい野球の7割程度の距離で行うため、アウト・セーフがかなりスリリングになる。
 
(2)「ダブルベース」システム
 塁間が短いことからクロスプレーが増え、特に一塁は、守る側と打者走者が交錯して危険なため、打者走者用にファールゾーンにオレンジ色のベースが置いてある。但し、このベースを使うのは、どうやら打者が一塁に駆け込む時だけらしい。
(3)離塁アウト
 このルールは知っている人も多かろうが、ソフトボールでは、投手がボールを手放すまでは、走者はベースからリードすることは出来ない。こっそりやろうとしても、審判に見つかるとアウトを宣告される。

(4)指名打者(DH)制度
 公式ルールでは、どのポジションに就いている選手に対しても指名打者を使って構わないことになっている。必然的に守備だけをやる選手も出てくる。守備専門の選手(どうやらDEFと称するらしい)って、何となく、バレーボールのリベロみたいだぜ。

(5)ゾンビルール
 野球慣れしていると、相当驚くルールだが、一旦退いた選手が一回だけならまた出てもいいよ、というルールがあるらしい。まさしく「ゾンビ」。

(6)「用具」雁字搦め(←がんじがらめ)
 いやいや、これについては相当うるさいよ。ボールは日本ソフトボール協会(以下JSA)の公認マークが印字されたもの(2号=直径28.58cm、3号=30.48cm 女子は通例3号を使う)じゃないとイケナイし、バットもJSAが認めたものじゃないとイケナイ。ヘルメットに至っては、「危険防止のため、打者、打者走者、捕手及び次打者はヘルメットの着用が義務づけられ、プレー中にヘルメットを意図的に脱ぐと、即刻アウト」という情け無用のルールまである。
 もともと、野球より安全にやるために出来たスポーツなのに、これって本末転倒でないの?
 ちなみに、本日の試合では、両チームの一塁コーチ・三塁コーチはヘルメットを着用していたが、審判はヘルメットをしていない。どうも、これも腑に落ちないが....。

(7)超前進守備
 これはルールではないけど、とにかく内野手は驚くほど前に守っている。塁間は短いし、ボールはまさに「ソフトボール」なので、あんまり飛ばないわけで、転がったボールは即座に拾い上げて一塁に投げないと、アウトにできない。ある意味、これがソフトボールの面白さかもしれない。

監督・コーチに聞いてみました
 

監督の長谷川正紀先生

コーチの齋藤一樹さん

 監督は数学の先生である長谷川正紀先生。昨年茅高に赴任され、ソフトボールの経験はなかったが、空席となっていた顧問を引き受けられた。人当たりがソフト(シャレではなく)で、語り口調もたいへん優しい。

Q:体育の先生でもなく、ソフトボールの経験もない先生が、顧問として休日返上で大会のベンチに入る、というのは大変ではないですか?
A:やってみてわかったのですが、ソフトボールは面白いですね。浮き上がってくるボールを打つ難しさとか、野球とはルールも違いますし。それに、子供たちのことは好きなので、生徒たちが望むなら、出来る限りのことはしたいと思います。

Q:同好会から部に昇格して、生徒たちは変わりましたか?
A:そうですね、強くなりたいという貪欲な気持ちが出てきたように思います。それに部になったことで、新入生に対するアピール度も違ってきたかと思います。茅高では、チアや吹奏楽に入る子が多いですが、何とかソフトボールの面白さも伝えていきたいですね。


Q:今後、どんな運営をお考えですか?
A:スポーツは楽しくやりたいものです。その上で勝てるようにはなりたいですね。湘南地区で常勝チームになったら、父母会といったものもきちんと作りたいと思います。

Q:何か心配な点はありますか?
A:えぇ。今の3年生たちが抜けてしまうと、選手として稼動できるのが8人になってしまうんですね。そうすると、ゲームも出来ないので、6月までにまた新たに何人か入部してもらわないといけない、ということですね。

 多くの部が直面している部員不足。ソフトボールは少なくとも9人いなければ試合が出来ないので、部員集めはかなり大変なハズ。

 もし、これを読んだ茅高生(女子に限る)は、ソフト部に入ってみないかい?中学時代に経験がなくても大丈夫。今の部員たちも初心者が多かったそうですぞ。

 コーチの齋藤一樹さんは体育教師を目指している25歳。高校時代はサッカー部キャプテン。2年前から、非常勤講師・臨任講師として茅ヶ崎高校で教鞭を執る傍ら、週に2日、ソフトボールのコーチにも携わる。

Q:部になって、生徒たちはどこか変わりましたか?
A:「明るく、楽しく」という雰囲気は変わりませんが、「本格的にやりたい」「強くなりたい」という気持ちが出てきたように思います。

Q:茅高ではサッカー・野球・陸上といった部活とグラウンドを共有していますが、そのことは大きな問題となっていますか?
A:いえ。サッカー・野球の先生たちとも話し合って、よくしてもらっているので、グラウンドのことで困ることはありません。

Q:齋藤さんにとって、茅高ソフト部の目標を挙げるとすればどんなことになるでしょうか?

A:競技の成績で言うなら、湘南地区で優勝するとか、県大会で1勝するというところでしょうが、私がいなくても、練習メニューの意味を考えて、部員たちだけで練習できるようになってもらいたいですね。

 齋藤さんはこの夏も教員試験という高い壁に挑む。どれほど多くの若者たちが、教職を目指しながら諦めていったことか。そういった意味からも、齋藤コーチにはエールを贈りたいと思う。
  
意外に(?)応援に来る人も多い。右は茅高を応援に来たお母様2人と管理人。

部員たちに聞いてみました
 
 同好会から部への昇格に、最も功績があったのは現3年生たちであろう。その中から、キャプテンとエース、それにこの『部活.ネット』への連絡をくれた中津川由里外野手に話を聞かせてもらった。
 

左から、林陽子さん(投手)・中津川由里さん(外野)・小川真智子さん(外野)
   キャプテンの小川真智子さんはセンターを守る。中学時代はソフトボールの経験はないそうだ。

Q:キャプテンって、何が大変かな?
小川:なかなか練習に出てこない人たちに練習に出てもらう、ということが一番大変でした。

Q:今日の試合については?
林:明るさは出ていたと思う。
小川:最初はちょっと緊張していたけど、その後は茅高の雰囲気が出せたです。
 
Q:中津川さんと小川さんは中学時代にソフトの経験がないそうだけど、なぜソフトボールをやろうと思ったの?

中津川:楽しそうで、仮入部したら先輩たちが優しかったから続けようと。
小川:明るい雰囲気で、自分らしさも出せると思った。


Q:6月に行われるインターハイ予選が引退試合になりますが、どんな試合をしたいですか?

林:悔いの残らない、素敵なゲームをしたいですね。
小川・中津川:うんうん。


Q: 今日はどうもお疲れ様でした。また、取材に伺いますね。

 というわけで、ソフトボールをやるのが楽しくて仕方ない、といったノリの選手たちでした。あとは、立ち上がりの硬さをどれほど克服できるか、ということと、いかに強いバッティングができるか、というところですね。

 部への昇格を機に、有終の美を飾って下さい。